夕霧かずき

 

・嘘一つ言はずに終へし萬愚節

三度目の源氏物語もだいぶ進んで、
まもなく初音に入ります。
学校の勉強でなく、
自分で読もうと思って最初に読んだのは、
高校に勤めていた頃ですから、
ほぼ三十年前になります。
今と同じように出勤前の朝早く、
時間を決めて読んだのですが、
なんともお勉強のようなつまらぬ読書で、
楽しむどころではありませんでした。
その後ずうっと時間がたち、
まず田辺聖子の『新源氏物語』を、
つぎに谷崎潤一郎の現代語訳を、
それと並行するように
岩波文庫ワイド版で読んだら今度は読めた。
さらに、
瀬戸内寂聴訳で物語に登場する女たちにダイブし、
橋本治『窯変 源氏物語』で光源氏にしんねり突っ込みして、
原文にもう一度アタックしたわけです。
三度目の正直!?
だいぶ楽しめる間が増えた気がします。
が、
すらすらすらと読めるかというと、
そんなことはありません。
ふー。
やはり千年の時間は大したもの。
そして読めば読むほど、
作者の紫式部という人はスゲー! と思ってしまいます。
このごろの楽しみは、
自分が映画監督か
テレビドラマのディレクターになったとして、
登場人物たちのそれぞれに、
芸能人だったら誰を、
あるいは自分の周りの人だったら誰をあてるかと空想すること。
それで独りバカウケしているのが、
光源氏と葵の上の子どもである夕霧。
お勉強はできるけれども、
融通が利かず、
好奇心旺盛であっちふらふらこっちふらふら、
若いのに、勉強ができるものだから、
なんとなく老成していて、
この感じ、
いるかいないかいないかいるかと
目を宙に泳がせていたら、
えなりかずきが突如目の前に現れた。
以来、
物語の中をえなりかずきが徘徊し、
はらってもはらってもえなりかずきが拭えません。
夕霧かずきとよびたくなる所以です。

・あの娘から愛の告白萬愚節  野衾