天狗魚

 

・梅白し白く咲かせてひかりかな

夢を見た。
神奈川新聞社のS記者と天狗魚の取材をしにゆく夢。
S記者は、
自転車記者の佐藤氏。
だったら、
佐藤さんでいいようなものですが、
夢の中で、
佐藤さんのプライバシーを慮っているようだったので、
夢に忠実にS記者でいきたいと思います。
ところどころから
湯気を噴き出す地獄谷のような丘を、
S記者は軽快なフットワークで走っていきます。
頭に例のヘルメット。
上半身、裸。
わたしは遅れまいとついていくのですが、
ぼっかり開いた穴が恐ろしくて、
なかなかスピードがでません。
穴の中は、
熟れたイチジクの色をしており、
イソギンチャクをも髣髴とさせます。
S記者はときどき振り返っては、
わたしを待ってくれています。
寺がありました。
その中を通って、目的の沼に向かいます。
寺の中では
十数名ほどの小坊主と青年僧が修行の最中。
体にオーラは感じられません。
沼は寺の敷地内にあり、
S記者は、
パンツ一丁で躊躇することなく沼に入っていきます。
わたしも真似してずぶずぶと。
目の前、
一メートルほどのところに、
深緑色に輝く魚が近づいてきました。
これか。
体つきは鯉に似ている。
デカい。
口から霧のような液体を吐いている。
水に顔を寄せて匂いを嗅ぐと、
臭い。
つい、顔をそむけてしまいます。
魚は大岩の反対側から泳いでくるようです。
と、
S記者が顔を高潮させて戻ってきました。
わかりました!
わかりました!
S記者は、
誇らしげに右手を大きく上げながら、
水をこいでこちらにやってきます。
ははーん。
話を聞く前から、
S記者、
天狗魚と
寺との関係にまつわる黒い噂の真相を
つきとめたのだなと直感しました。

・我がこころ極を歩きて帰り来ぬ  野衾