山ガール

 

・大山に十一月の富士見かな

大山の頂上から反対斜面を下っているときのこと、
いまはやりのファッショナブルな山ガールに
何人も遇いました。
すれちがいざま、山で行き交う人らしく、
「こんにちは」
「こんにちは」
薄化粧した顔に汗が光っています。
わたしの後ろを
おばさんたちがついて下りていましたが、
こんな話が背中から聞こえてきました。
「あれが、いまはやりの山ガールよ」
「どの娘もかわいいわね」
「ほんとほんと」
「山に登るときれいになるのかしら?」
「あんたバカね。
かわいい娘が山に来るのよ。
デブで不細工な娘は最初から山になんか来ないの」
「そうかしら」
「そうよ。ほらっ。こっちこっち」
口の悪いおばさんをやり過ごすため脇へ寄りました。
おばさんたち、
格好だけは山ガールに劣りません。
さしずめ山婆ール。
まちがっても口に出してはいえません。
「なに言ってんの山爺ールが!」
と言い返されるのがオチです。

・大空の下雪を湛えてあれが富士  野衾