十一月

 

・都会では栗をスプーンでほじるなり

いい季節になりました。
汗をかきながらゼーゼー言って上った坂を、
いまは月を見ながら上っています。
狂った夏は、
月を見る余裕さえありませんでした。
さて、
きのう訪ねた定食屋さんで、
メロン一切れと大粒の栗一個が入った
ガラスの小鉢を供されました。
あとから
ご主人が客にスプーンを配って回っています。
小鉢に添えるのを忘れたのでしょうか。
最初、
何のためのスプーンかと思いましたが、
栗が包丁で半分に切られてあったので、
スプーンでほじって食べろということだと気づき、
そうしてみたら、
確かに食べやすく、
最後は、
スプーンの柄(え)の部分でなく
(あそこ、なんと言う?)
匙(さじ)の半球の部分を直接持って、
栗の実の黄色が消えるまで
徹底的にほじって食べました。
挙句の果てに渋までほじり。
馬鹿だ。
なくて七癖、
悪い癖で限度というものを知りません。
適当なところで止めておくべきでした。
とまれ秋は季節の食べ物が豊富でうれしい限り。

「秋田魁新報」文化欄に拙稿が掲載されました。
コチラです。

写真は、イシバシ提供。

・栗落ちろ落ちろと唱ふ頃もあり  野衾