手帳

 

・立ち止まりマンション前の冬の月

退社後、
有隣堂横浜駅ルミネ店にて来年の手帳を買いました。
高橋の手帳にもずいぶんおせわになりましたが、
このごろはもっぱら
能率ダイアリーB6カジュアル1(ブラック 商品番号2261)
価格は1449円(本体1380円)
この手帳、
使い勝手がいい(まず、これが一番!)だけでなく、
表紙にエンボス加工が施されていて、
材質の割りに、
カバンに入れたとき、
中の財布やペンケースや文庫本の表紙にくっつかない。
一年間つかうものですから、
こまかい仕様がとても大事です。
このごろは、
使い勝手を工夫した
いろいろな手帳が市場をにぎわしていますが、
手帳に書き込むことが目的になってしまうような、
疲れるものも少なくないようです。
デザインがシャープで、
あまり自己主張してこない2261番を
来年も使います。

・崖っぷちにゆらりゆらりの枯芒  野衾

気象情報は

 

・目覚めればアッと驚く霧の中

引きつづき、NHK「首都圏ニュース845」
きのうも奈実ちゃんでしたから、
「気象情報は斉田さんです」
ただ、ん!?
と一瞬思いました。
というのは、
「気象情報は斉田さんです」と発する前、
わずか一秒もないぐらいでしたが、
笑いをこらえているような表情を
ほんの一瞬だけ、
奈実ちゃんがしました。
なぜ?
なぜ?
どして?
気象情報を伝えるコーナーでは、
斉田さんのいる場所へ移動しますから、
その際に、
ちょっとつまずいたのかもしれません。
いや、
カメラのコードに踵を引っ掛けたとか。
あるいは、
ヒールが片方脱げたとか。
はたまた、
原稿を落としてあわてて拾ったとか。
いやいやそんなことでなく、
理由もなくただなんとなく可笑しかったとか…。
想像はいくらでもふくらみます。
ふと
我れに返りました。
いろんなことを想像し、
気象情報をほとんど聞いていない自分に気づきました。
きょうの横浜の天気は何だった?

・この霧が綿飴だったら甘過ぎる  野衾

祐佳ちゃんと奈実ちゃん

 

・四季でなく二季のやうなる寒さかな

ひかりちゃんとりなちゃんみたいですが、
祐佳(ゆか)ちゃんと奈実(なみ)ちゃんは
NHKのアナウンサー。
夜八時四十五分から十五分間の
首都圏に関するニュースを担当しています。
天気予報を担当するのは
斉田季実治(さいたきみはる)さん。
わずか十五分の番組ですが、
一日の出来事をコンパクトに
分かりやすく伝えてくれるので、
寝る前の十五分を楽しみにしています。
ひとつ、面白いな~個性がでてるな~
と思うことがあります。
それは天気予報に入るときの
祐佳ちゃんと奈実ちゃんの言い方の違い。
祐佳ちゃんは、「気象情報は斉田さんとお伝えします」
奈実ちゃんは、「気象情報は斉田さんです」
きのうは奈実ちゃんでしたから、
「気象情報は斉田さんです」
わたしはこれを聞くたびに、
気象情報という人がいて、
街を歩いている姿を想像します。
だって、
「気象情報は斉田さん」ですから。
奈実ちゃんはきのう、
鼻声でした。
ほんのほんのわずかですが、
顔をゆがめる瞬間がありました。
でも、
かわいいからいいです。
斉田さんの声がまたいいんですよね。
ゆっくりやわらかく温かい。
斉田さんの声を聴くと、
一日の疲れがほぐれ、
ほっこりします。
熊本県出身、
大学は北海道だそうで、
あの声は
そういう経歴も関係しているでしょうか。

・冬の雨ゴム長靴の温さかな  野衾

禾本科

 

・朝寒の椅子に胡坐の読書かな

かほんか、と読みます。
イネ科のことです。
「禾」は、のぎへんですが、
「禾」の字、
しばらくじ~~~っと見ていると、
見ていると、
見ていると、
見ていると、
ほら、
ほら、
実った稲穂に見えてくるでしょう。
ね。
『角川漢和中辞典』には、
「禾」の古い字形が書かれてあり、
それだと、もっと垂れた稲穂に似ています。
そして、
「いね科植物の頭部の垂れている形を表わす」
と記されています。
また、
「クヮ(カ)の音は
たれさがる意の語源(下)からきている」とも。
漢字はやっぱり象形文字なんだなぁ。

・朝寒やコーヒー茶碗を挟みをり  野衾

山で目立つには

 

・高尾山六根清浄唱へつつ

高尾山に登ってきました。
ケーブルカーは使わず、
往きも帰りも徒歩で。
天候にもめぐまれ絶好の登山日和。
京王線の高尾山口駅から山のてっぺんまで
人の列が途切れません。
山頂ちかくの店でとろろ山菜蕎麦を所望し、
それから持参のシャケ入りおむすびを。
さて、と。
リュックを背負い、
どっこいしょと立ち上がり、
下山に向かうや、
下からぞろぞろ来たなかに、
ヴィトンのバックを肘に抱え
細いかかとのハイヒールを履いた女性が一人。
目立つことこの上なし!
小声ながら皆口々に、
「ママ、ハイヒール!」
「いいの! ほら、これ持って。もうすぐよ!」
「はははは。ハイヒールか」
「山を嘗めんなよ」
「ママ、ママ、ほら!」
「え? あ! すごい!」
子どもは子どもらしく、すぐに指摘します。
ヴィトンバックのハイヒール女子、
自業自得とはいうものの、
みんなに指さされ、
ちょっと気の毒になりました。
おそらく、
下からケーブルカーで山頂まで来て、
帰りもケーブルカーなのでしょう。
問題ないといえば問題ない。
個人の勝手ですが、
山とハイヒールというのは、
いかにもふつり合いなのでした。
保土ヶ谷の自宅から高尾山まで、往復二万歩、
いい運動になりました。

・高尾山登り下りの紅葉かな  野衾

十一月

 

・都会では栗をスプーンでほじるなり

いい季節になりました。
汗をかきながらゼーゼー言って上った坂を、
いまは月を見ながら上っています。
狂った夏は、
月を見る余裕さえありませんでした。
さて、
きのう訪ねた定食屋さんで、
メロン一切れと大粒の栗一個が入った
ガラスの小鉢を供されました。
あとから
ご主人が客にスプーンを配って回っています。
小鉢に添えるのを忘れたのでしょうか。
最初、
何のためのスプーンかと思いましたが、
栗が包丁で半分に切られてあったので、
スプーンでほじって食べろということだと気づき、
そうしてみたら、
確かに食べやすく、
最後は、
スプーンの柄(え)の部分でなく
(あそこ、なんと言う?)
匙(さじ)の半球の部分を直接持って、
栗の実の黄色が消えるまで
徹底的にほじって食べました。
挙句の果てに渋までほじり。
馬鹿だ。
なくて七癖、
悪い癖で限度というものを知りません。
適当なところで止めておくべきでした。
とまれ秋は季節の食べ物が豊富でうれしい限り。

「秋田魁新報」文化欄に拙稿が掲載されました。
コチラです。

写真は、イシバシ提供。

・栗落ちろ落ちろと唱ふ頃もあり  野衾

電池切れ

 

・秋の日のあと七曜の命なり

ケータイの電池が切れるように、
朝起きてから夜寝るまでには、
エネルギーは確実に目減りします。
朝眼が覚めたときは、
充電器から離れたばかりのようにシャキーン!
出社し午前中の仕事を元気にこなします。
昼はさて何にしようかな。
何を食べるかを考えるのがけっこう楽しみ。
食事を終え、
社に戻り午後の仕事。
まだ大丈夫!?
午後4時。
電池表示の横棒が一本白くなります。
午後五時。
さらに一本。
もはやいつ切れてもおかしくない状態。
午後六時。
完全に切れます。
自分が一反木綿になった気分。
ふわふわぺらぺらと紅葉坂を泳いで帰宅します。
うっすらと笑いまで浮かべて。
思うに、
朝早く起きるから、
エネルギーの減り方がこのようになるのでしょう。
でも、それでいいのだと思っています。
♪朝はどこから 来るかしら
♪あの空越えて 雲越えて
♪光の国から 来るかしら
♪……
そういう歌がありますが、
子どものころに歌った記憶があります。
昭和二十一年につくられた歌だったんですね。
知りませんでした。

・一日の電池切れたり秋の風  野衾