おかし男・徳冨蘆花

 

・知人宅獺祭飲んでひとねむり

夕飯後に読む本は『蘆花日記』。
一日の仕事が終って疲れていますので、
物語などはとうてい読めませんが、
日記なら読めます。
そして、
徳冨蘆花の日記は、
評判どおり、
すこぶる面白く、
疲れを忘れて爆笑し、
家人に呆れられたりしています。
ただいまその第四巻。
大正五年十二月から大正六年五月までの分ですが、
たとえば、
大正六年四月十五日の日記にこうあります。
「主人(蘆花のこと)は若い女の肉が好きだ。新聞に十三娘が強姦されて死んだ事や、十五娘を湯帰りに擁して姦した男の事を読むと、無惨の感より、羨ましい感が第一に動く。今日も午餐後、廊下で玉(十八歳の女中さん)の頬をたゝいたら、羽二重餅の様に軟らかだつた。あの軟らかい若い処女肉は大切にして保護せねばならぬ――と思ひつゝ其一きれ(漢字変換できず)を嘗めて見たい――それは罪だ――罪は犯したいが犯したくない――そこでmoroseとなる。」
moroseは、不機嫌とか陰鬱の意。
馬鹿といえば馬鹿。
馬鹿正直。
だれも、そう感じても口にするのをはばかる内容だ。
作家の日記としては、
稀有のものではないでしょうか。
爆笑した後、
余韻のままにもう少しページを進めると、
四月十八日の最終行に、
「中心に満足があるので、表皮の不快に関せず、さまで悪くない機嫌でbedに入る。」
とあって、
どきりとする。
「中心に満足がある」
たしかにそう感じる日が、
そうとしかいえない日があります。
わたしはbedではありませんが。

・パンソリの声と鼓(つづみ)の秋夜かな  野衾