森山

 

・霧裂きて屹然たりし蔵王山

もりやま、と読みます。
我がふるさと井川町の隣り、
五城目町にある山で、
平地ににょっきりと佇立(ちょりつ)しています。
その頂上にある石碑が気になり、
五月の連休に訪れましたが、
その後さらに調べたいことが生じ、
弟に車を出してもらい、
再び登ってきました。
資料が残されていないか、
あってもまだ見ることが叶いませんので、
確かなことはわかりませんが、
それだけに
なおさら興味は尽きません。
昭和四年生まれといいますから、
わたしの父より二歳年上の、
小浜信夫さんから
いろいろと教えていただき、
森山山頂へも同行していただきました。
目的の石碑についての説明を伺い、
山頂からの眺めを楽しんだ後、
急坂をそろそろと車で下りていたとき、
目の前にいきなり
二匹のカモシカが悠然と現れ、
こちらを見ています。
銀色に輝く毛並みの美しさに見とれ、
写真に撮ろうと
あわてて外へ飛び出し
カメラを構えて追いかけましたが、
とんとんとんとカモシカは静かに歩き、
藪だらけの崖に姿を消しました。
野生のカモシカの
物言わぬ威厳にうたれ、
しばしホーと溜息を洩らしました。
小浜さんが、
「カモシカがでるをなぁ。やっぱりなぁ」、
ぽつりと言いました。

・鰯雲夢と不安はつづきをり  野衾