追悼工藤正三先生

 

・霧くぐり足下数へ立石寺

今年の社員旅行は山寺と蔵王。
昨年は台風の影響で新幹線が運休し、
行こうとして行けず、
やっと念願かない登ってきました。
山形といえば工藤正三先生です。
行く先々で供される漬物をいただくたびに、
先生のことを思い出しました。
京都の漬物も美味しいですが、
山形の漬物も美味しい。
茄子の漬物ぺそら漬けなんて、
辛さとともに先生の口吻までなつかしく聞こえてきます。
「どだ? んめが?」
「はい、おいしいです」
「そが。んだが。ふぉっふぉっふぉっふぉっ…」
人は死んで、
この世に居なくなりますが、
居なくなっただけで、
無くなったわけではありません。
古い書物を読むたびにそう思いますし、
何よりも、
自分の体と心が無理なくそう感じます。
そのことをむしろ大事にしたい。
百年や二百年で感じ方、考え方、
文化はそうそう変わらないのでしょう。
工藤先生のご冥福を祈りながらの旅でした。

・山寺を下りて見上げる霧深し  野衾