ホームにて

 

・虫の音に耳を澄ませて彷徨ひぬ

電車がホームに停まってドアが開くと、
ぐつぐつ煮えた鍋の蓋をとったときのように、
人といっしょに熱気が放散します。
一昨日保土ヶ谷駅でのこと、
電車が停まって
ドアのすぐ近くに立っていたわたしは、
ドアが開けきらぬうちにホームへ。
ほ~と溜息ひとつ。
もうひとつ。ふ~。
電車を降りた客が階段へ向かいます。
混雑が嫌いなわたしは、
しばらくホームで待ちます。
待っているうちに、
ホームの反対側に電車が滑り込んできて、
元の木阿弥、
またまた人が少なくなるのを待つ
羽目になったりすることもありますが…。
ところで一昨日、
ホームに降り立ったとき、
わたしのすぐ後ろから
電車を降りた初老の男性が、
ベンチに腰掛け、
背負っていたリュックとショルダーバッグを下ろし、
なかから本を数冊取り出しました。
一冊は、
紫の装丁が目をひく瀬戸内寂聴訳『源氏物語』。
もう一冊は、
小学館の新編日本古典文学全集
に入っている『源氏物語』でしょう。
装丁の模様に特徴があります。
よほど声をかけようかとも思いましたが、
よしました。
大型の『源氏物語』本をバッグに入れ
持ち歩き、
ひまを見つけては
読んでいるだろう人を知っただけで、
うれしく、
元気になり、
同志を見つけた気にもなりました。
本を読もう、
もっと本を読もうと、
長田弘さんの詩にあります。

・帰り来て膝裏痒き残暑かな  野衾

 

 

ツブヤ大学「BooK学科ヨコハマ講座」のお知らせ

春風社事務所を会場にして、
毎月行っているトークイベントのお知らせです。
今月は、
「1枚のポップが本の面白さを伝える」
をテーマに、
有隣堂アトレ恵比寿店に勤務する梅原潤一さんを
ゲストにお招きします。
梅原さんのポップは注目の的、脅威の的で、
「梅原ポップ」を全国に配布したり、
文面を本のオビにつかったりする出版社もあるのだとか。
まさに梅原マジック!
梅原さんがポップをつくると、
なぜ本が売れるのか、
本にかかわる人、本好きの方はもちろん、
商品をどうやってアピールすべきかを
日々考えておられる方は、
ぜひとも聞いてみたいところです。
梅原さんが書かれた
『書店ポップ術 グッドセラー死闘篇』(試論社)に、
つぎのような言葉があります。
「小説を売りたい。でも、小説は売れない。
そんな状況に、私はポップという紙1枚で立ち向かおうと思っている。」

当日は、以下の本について、
梅原さんがつくった実際のポップを見ながら、
「梅原ポップ術」についてうかがいます。
お早目のご予約をお願いします。

奥田英朗『家日和』(集英社文庫)

荻原浩『神様からひと言』(光文社文庫)

貫井徳郎『微笑む人』(実業之日本社)

春日武彦『緘黙』(新潮文庫)

椰月美智子『どんまいっ』(幻冬舎文庫)

上原隆『こんな日もあるさ 23のコラム・ノンフィクション』(文藝春秋)

角田光代『紙の月』(角川春樹事務所)

奥田英朗『我が家の問題』(集英社)

●日時 8月31日(金)午後8時~
●場所 春風社
●参加費 1000円

詳しくは、こちらをご覧ください。