梅ジュース

 

・静けさや夏に鏡花の文妖し

本を秋田の家まで送るのに、
宅配便の係りの人に来てもらいました。
休日の午前中に来て欲しいと
電話受付で伝えたのですが、
休日の配達に思いのほか時間がとられたらしく、
十一時ごろ、
担当のトラック運転手から電話がありました。
礼儀正しい若者で、
約束の時刻より遅れる詫びの電話なのに、
きびきびはつらつとしてい、
電話を切って受話器を置いたとき、
気持ちよくなってさえいました。
十二時四十分ごろ、
ドアホンが鳴りました。
暗い廊下を歩きドアを開けると、
黒々した強烈な熱の塊(失礼!)が立っていました。
渡された元払いの送り状に記載している間も、
若者は休むことなく
近所へ荷物を配達しています。
送り状を書き終えて数分後、
若者が戻ってきました。
タイミングよく、
グラスに入れた自家製の梅ジュースを
家人が盆に載せて持って来ました。
差し出すと若者は礼を言い、
一気に喉を鳴らせて飲みました。
と、
「うめぇー!! なんですかこれは! うめぇー!!」
その後も、
言葉にならぬうめぇーのさざなみが
きらきらしています。
熱中症にならぬよう気をつけてください。
はい、ありがとうございます。
なんとも気持ちのいい若者でした。

・ベランダの風鈴二つ音を競ふ  野衾