得した気分

 

・街逃れ木下闇に息を吐く

このごろの朝読、
瀬戸内寂聴訳『源氏物語』が
いよいよ最終十巻目に入りました。
おもしろい!
光源氏が死んでからの、
いわゆる宇治十帖の物語を、
いままでなんとなく
オマケみたいに思ってきましたが、
どうしてどうして、
そんなことはまったくありません。
とにかく登場人物たち一人ひとりが生き生きしています。
滑稽なぐらい。
たとえば、
女好きの匂宮(におうのみや)が
悲劇のヒロイン浮船(うきふね)に初めて会う場面で、
浮船付きの乳母が事が起こってはいけないと、
匂宮を鬼瓦のような顔で
(とは書いていませんが)睨み、
匂宮は匂宮で、
老女の乳母をつねる(!)なんていうのは、
思わず笑ってしまいます。
また、
光源氏もそうでしたが、
この匂宮も、薫も、
男のいやらしさ、くだらなさを
これでもかというぐらい見せつけてくれます。
男であることがいやになってしまいます、ホント。
それぐらい、
紫式部という人は、
男の生理と生態を洞察していたということなのでしょう。
千年も読み継がれるわけです。
この物語を読んで、
男としての自身のいやらしさ、
くだらなさを思わない男はいないのじゃないでしょうか。
ところで、
寂聴さんのこの本を、
わたしは古書で安く手に入れましたが、
最終巻を開いてアッと驚きました。
ご本人のサインが本の見返しに筆文字で書かれてありました。
訳が完結したことの記念に、
サイン会か講演会でも行われたのでしょうか。
なんだか得した気分です。

・五月雨を降らしゆったりゆったりと  野衾

 

● 「読書会」のお知らせ

春風社事務所を会場にして、
毎月行っているトークイベントのお知らせです。
今月は、
「池内紀の読書会」と題し、
ドイツ文学者でエッセイストの池内紀さんを
ゲストにお招きします。
池内さんの自著2冊、訳書1冊を取り上げ、
ご本人を囲みながら、
旅、カフカ、翻訳の裏話について、
いろいろ楽しいお話をうかがいます。
取り上げる本は、
『海山のあいだ』(中公文庫)
『となりのカフカ』(光文社新書)
『香水――ある人殺しの物語』(文春文庫)

今回は土曜日ということもあり、
大勢のご応募が予想されます。
お早目のご予約をお願いします。

日時 7月21日午後6時~
場所 春風社
参加費 1000円

詳しくは、こちらをご覧ください。