五月雨

 

・鼻毛抜き右方の目より露流る

●五月雨をあつめて早し最上川

ご存知、松尾芭蕉の有名な俳句です。
わたしがこの句を知ったのは、中学生のときでした。
国語の時間だったと思います。
字の上手な本間先生かな。
五月雨と書いて、さみだれと読むんだな。
ふむふむ。
五月に降る雨があつまって、
最上川の水がはやく流れているってことか。
ふむふむ。
たぶんそんなふうに思ったのでしょう。
国語の先生がそのときどんな説明をしてくれたのか、
もうすっかり忘れてしまいました。
あれからほぼ四十年。
五月雨を五月の雨と思って、
何も疑わずに来てしまいました。
愛用している角川書店編『合本俳句歳時記 第三版』
によれば、
「陰暦五月に降る長雨。
『古今集』以来の雅語で、漢語の梅雨とほぼ同じ。
五月(さつき)の「さ」と水垂れの「みだれ」を結んだ意といわれる。」
え!? 五月に降る雨じゃないの?
梅雨と同じなの?
そ、そうだったのかー!!
知りませんでした。
ていうか、うっかりでした。
松尾芭蕉の五月(さつき)は、いまの五月ではありません。
そりゃそうだ。
五月雨が梅雨と同じということであれば、
あの有名な句の景がまったくちがって見えてきます。
連日、山にも、林にも、川にも野原にも、
家々の屋根にも降る雨をあつめて滔々とながれる最上川、
ということになれば、
「あつめて」が俄然きわだった言葉に思えてきます。
ということで、
これからは、
六月雨と書いてさみだれと読ませてはどうでしょう。
だって梅雨の雨のことなんだもの。

・建物も人も経年変化せり  野衾