寂聴さん

 

・端境の梅雨と明けの入り乱る

瀬戸内寂聴さんの講演を聴きに行ってきました。
この五月に九十歳の誕生日を迎えられたそうです。
お元気で、
かくしゃくとして、
日野原さんも怪物ですが、
日野原さんにひけをとらず寂聴さんも怪物です。
二三〇〇人の聴衆を前に、
七十分間お話くださいました。
始まる一時間前に受付を済ませたので、
九列目のいい席で聴くことができました。
大きなスクリーンにお顔が映し出されましたから、
表情のひとつひとつを拝見しながら、
たのしい話に耳を傾けました。
「~なければいけません」という言葉を、
寂聴さんは、かすかに
「~なければいけましぇん」と発音します。
それが妙にリアリティがあり、
またかわいらしくもありました。
亡くなった祖母を思い出してジ~ンとしました。
それから、
寂聴さんの目がすごい。
小さい円い眼球が、
パパッ、キラキラッとすばやく動きます。
硬質な感じで、
まるで独立した生き物のようです。
お話が終り質問の時間にうつったときに、
アッと驚きました。
元気に話される寂聴さんに慣れていましたから、
耳が遠いことは
年齢からいってあたりまえなのに、
気づきませんでした。
会場にいただれもがそう感じたのではないでしょうか。
会場の空気が少し変化しましたから、
きっとそうだったのでしょう。
そうと分かったのですから、
質問者は、
有名人に質問すること自体を目的としたりせずに、
過度の慇懃さが無礼になるような言い方に堕することなく、
訊きたいことがあるなら、
訊きたいことだけを、ゆっくりと、大きな声で、
滑舌よく、
寂聴さんに恥をかかせるようなことをせずに、
話したらいいのにと思いました。
自分の母親、祖母に対して、
あんなものの言い方をする人はいないはずです。
もっとやさしくすればいいのにと思いました。

・梅雨湿りひっそり閑の道祖神  野衾

 

● 「読書会」のお知らせ

春風社事務所を会場にして、
毎月行っているトークイベントのお知らせです。
今月は、
「池内紀の読書会」と題し、
ドイツ文学者でエッセイストの池内紀さんを
ゲストにお招きします。
池内さんの自著2冊、訳書1冊を取り上げ、
ご本人を囲みながら、
旅、カフカ、翻訳の裏話について、
いろいろ楽しいお話をうかがいます。
取り上げる本は、
『海山のあいだ』(中公文庫)
『となりのカフカ』(光文社新書)
『香水――ある人殺しの物語』(文春文庫)

今回は土曜日ということもあり、
大勢のご応募が予想されます。
お早目のご予約をお願いします。

日時 7月21日午後6時~
場所 春風社
参加費 1000円

詳しくは、こちらをご覧ください。

雨上がる

 

・曇りのち晴れの七月漫ろなり

家人友人と三人で、
黄金町にある映画館ジャック&ベティまで歩きました。
ソクーロフ監督の『ファウスト』を観てきました。
長かった~。
眠かった~。
きれいかった~。
気持ち悪かった~。
そんな感じの映画でした。
映画の始まりと終りは、
しゃっきりぱっちり目覚めていたので印象が鮮明ですが、
中はぱっぱで、
ぼんやりとろけています。
帰りは横浜橋商店街の韓国料理店で食事。
ふたたび歩いて保土ヶ谷まで。
この日の歩数、往復で約一万三千。
休日のウォーキングとしては、
まあまあかもしれません。
下の写真は、歩きながら撮ったもの。
げに散歩は楽しい。

・餡蜜屋昭和も遠くなりにけり  野衾

● 「読書会」のお知らせ

春風社事務所を会場にして、
毎月行っているトークイベントのお知らせです。
今月は、
「池内紀の読書会」と題し、
ドイツ文学者でエッセイストの池内紀さんを
ゲストにお招きします。
池内さんの自著2冊、訳書1冊を取り上げ、
ご本人を囲みながら、
旅、カフカ、翻訳の裏話について、
いろいろ楽しいお話をうかがいます。
取り上げる本は、
『海山のあいだ』(中公文庫)
『となりのカフカ』(光文社新書)
『香水――ある人殺しの物語』(文春文庫)

今回は土曜日ということもあり、
大勢のご応募が予想されます。
お早目のご予約をお願いします。

日時 7月21日午後6時~
場所 春風社
参加費 1000円

詳しくは、こちらをご覧ください。

「読書会」のお知らせ

 

春風社事務所を会場にして、
毎月行っているトークイベントのお知らせです。
今月は、
「池内紀の読書会」と題し、
ドイツ文学者でエッセイストの池内紀さんを
ゲストにお招きします。
池内さんの自著2冊、訳書1冊を取り上げ、
ご本人を囲みながら、
旅、カフカ、翻訳の裏話について、
いろいろ楽しいお話をうかがいます。
取り上げる本は、
『海山のあいだ』(中公文庫)
『となりのカフカ』(光文社新書)
『香水――ある人殺しの物語』(文春文庫)

今回は土曜日ということもあり、
大勢のご応募が予想されます。
お早目のご予約をお願いします。

日時 7月21日午後6時~
場所 春風社
参加費 1000円

詳しくは、こちらをご覧ください。

藤原紀香

 

・蚊の音に振り回さるる寝床かな

このごろ、とんとお目にかかっていませんでしたが、
久しぶりに逢いました。
逢って、話までしました。
かなり広い居酒屋でのこと。
ミニスカートの脚を伸ばし、
リラックスして上半身を腕で支えた格好は、
なんともかわいくセクシーです。
わたしがウイスキーのことを話題にすると、
紀香さん、
身を乗り出してきました。
ラフロイグの味は秋田のイブリガッコに似ていると言うと、
ラフロイグの味だば秋田のイブリガッコに似でいると、
紀香さん、方言っぽくわたしの言った言葉を口にし、
くくくくと笑いました。
あいかわらず、
お茶目な人です。
今度誘ってくれる?
と少しまじめになって言うものですから、
もちろん喜んで、
とお答えしました。
藤原紀香といっしょにウイスキーを飲めるかもしれない。
ウイスキーはお好きでしょ。
ん。
あれは、石川さゆりか…。
それにしても脚が長い。
かつ、きれいです。
もちろん夢の中の話です。

・千年の煙り寿ぐ物語  野衾

出版業

 

・面接の子らにあきなひ教へらる

営業職で人材を募集したところ、
たくさんのご応募があり、
相当数の面接を行いました。
志望動機を尋ねると、
春風社のことをいろいろと褒めてくれます。
褒められて成長したいタイプですから、
嬉しくないこともないですが、
前に勤めていた出版社が倒産し、
赤羽の飲み屋で酒の勢いのままに、
「出版社を作ろう!」と宣言して作った出版社を、
日本の名だたる大学や大学院を卒業された方々が受けに来る
ことを冷静に考えてみると、
これは、
春風社の魅力というよりも、
出版そのものに人を惹きつける力であって、
春風社が今のところ
それを忘れていないということかな、
ぐらいに思っていたほうがよさそうです。
先日、
大久保文香さんが来社されました。
稀代の出版人・秋朱之介のお嬢様です。
大久保さんを通してうかがい知る秋朱之介の心意気は、
なんとも清清しい。
出版史に名を遺す秋が装丁した本を、
秋は自室に一冊も所蔵していなかったといいます。
えらい!
秋の『書物游記』には、
本づくりの大変さ、苦労、辛さ、憂さ、
だけでなく、
たのしさと喜びが行間からにじみ出ており、
何度も身につまされ、
笑い泣き、
泣き笑いさせられました。
せっかく横浜で起こした出版社ですから、
ご縁を賜り、
先達秋朱之介の域に
少しでも近づきたいと思っています。

・黴の花吹き飛ばすごとボブマーリー  野衾

テーブルクロス

 

・梅雨なれば降るか降るかと天仰ぐ

白にちかい薄いベージュの布製テーブルクロスを買いました。
来客用にと思って購入したのですが、
ためしに
見慣れたテーブルにふわりと掛けてみたところ、
なかなかいい感じで、
気分も一新。
しばらくそのままにしています。
ご飯を食べたり、
コーヒーを淹れて飲んだり、
コーヒーの木の鉢植えを置いたり、
ご飯を食べたり、
コーヒーを淹れて飲んだり。
……………
きのう面接した大学四年生が、
卒業論文で、
登場する人物からでなく
モノから映画について論述したいと話していましたが、
ふと思い出しました。

・梅雨空や回転椅子の胡坐かな  野衾

五月雨

 

・鼻毛抜き右方の目より露流る

●五月雨をあつめて早し最上川

ご存知、松尾芭蕉の有名な俳句です。
わたしがこの句を知ったのは、中学生のときでした。
国語の時間だったと思います。
字の上手な本間先生かな。
五月雨と書いて、さみだれと読むんだな。
ふむふむ。
五月に降る雨があつまって、
最上川の水がはやく流れているってことか。
ふむふむ。
たぶんそんなふうに思ったのでしょう。
国語の先生がそのときどんな説明をしてくれたのか、
もうすっかり忘れてしまいました。
あれからほぼ四十年。
五月雨を五月の雨と思って、
何も疑わずに来てしまいました。
愛用している角川書店編『合本俳句歳時記 第三版』
によれば、
「陰暦五月に降る長雨。
『古今集』以来の雅語で、漢語の梅雨とほぼ同じ。
五月(さつき)の「さ」と水垂れの「みだれ」を結んだ意といわれる。」
え!? 五月に降る雨じゃないの?
梅雨と同じなの?
そ、そうだったのかー!!
知りませんでした。
ていうか、うっかりでした。
松尾芭蕉の五月(さつき)は、いまの五月ではありません。
そりゃそうだ。
五月雨が梅雨と同じということであれば、
あの有名な句の景がまったくちがって見えてきます。
連日、山にも、林にも、川にも野原にも、
家々の屋根にも降る雨をあつめて滔々とながれる最上川、
ということになれば、
「あつめて」が俄然きわだった言葉に思えてきます。
ということで、
これからは、
六月雨と書いてさみだれと読ませてはどうでしょう。
だって梅雨の雨のことなんだもの。

・建物も人も経年変化せり  野衾