Archives : 7月, 2012

ジョルダーニ家の人々

・ウグイスは七月なのに啼くんだね

観ましたよー。
六時間三十九分の長丁場。
午後一時四十分に始まり、
三度の休憩が入り終ったのが九時十五分。
神保町の岩波ホールにて。
あまりの長さに、
途中何度か寝るかなと思いきや、
ていねいに撮られた細部に眼を奪われ、
眠る間もなく、
映画の面白さを久しぶりに堪能した気がしました。
ほんとうに面白かった。
現代のイタリアを舞台にした家族の物語で、
携帯電話、
それもスマートフォンが
物語の大事な場面でさりげなく使われ、
お、現代だな、
あ、うまいなと思いました。
少しだけ物語に触れると、
どこにでもあると思われた家族が、
末の息子の交通事故死から大きく歯車が狂い始めます。
平穏な日常というものが、
危うい奇跡的なバランスの上にしか
成り立たないものであると、
あらためて気づかされます。
登場する人物たちのだれもが弱く、
かなしく、
いとおしく思えてきます。
息子の死を受け入れられず、
ひとり精神の彷徨をつづけていた母が、
父の本気の語りかけにうなづき抱き合うシーンは涙を誘います。
この場面がストンと腑に落ちるために、
六時間半があったのだと合点がいきました。
何よりも、
一人ひとりの悲しみの表情、
喜びの表情、
切なさの表情、
あきらめの表情に“いま”を感じました。
そして必ず、
だれもがだれかの役に立っている。
必ず。
そのことが悲しいのです。
すばらしい映画でした。

・蚊遣香焚いて脛打つ夕べかな  野衾

梅ジュース

 

・静けさや夏に鏡花の文妖し

本を秋田の家まで送るのに、
宅配便の係りの人に来てもらいました。
休日の午前中に来て欲しいと
電話受付で伝えたのですが、
休日の配達に思いのほか時間がとられたらしく、
十一時ごろ、
担当のトラック運転手から電話がありました。
礼儀正しい若者で、
約束の時刻より遅れる詫びの電話なのに、
きびきびはつらつとしてい、
電話を切って受話器を置いたとき、
気持ちよくなってさえいました。
十二時四十分ごろ、
ドアホンが鳴りました。
暗い廊下を歩きドアを開けると、
黒々した強烈な熱の塊(失礼!)が立っていました。
渡された元払いの送り状に記載している間も、
若者は休むことなく
近所へ荷物を配達しています。
送り状を書き終えて数分後、
若者が戻ってきました。
タイミングよく、
グラスに入れた自家製の梅ジュースを
家人が盆に載せて持って来ました。
差し出すと若者は礼を言い、
一気に喉を鳴らせて飲みました。
と、
「うめぇー!! なんですかこれは! うめぇー!!」
その後も、
言葉にならぬうめぇーのさざなみが
きらきらしています。
熱中症にならぬよう気をつけてください。
はい、ありがとうございます。
なんとも気持ちのいい若者でした。

・ベランダの風鈴二つ音を競ふ  野衾

ケチャケチャケチャケチャ

 

・うだりつつ目には見えねど秋薫る

週一で通っている気功教室に、
かつてマラソン選手、
いま熊本市議会議員の
松野明美によく似た方がいらっしゃいます。
彼女と話したことはありません。
教室は夜の七時ちょうどに始まり、
八時から十分休憩、
後半三十五分のセットに入ります。
休憩は休憩ですから、
みなさんそれぞれですが、
割と静かなまったりとした時間が流れています。
わたしは椅子に斜めに腰掛け、
頭を後ろに反らせつつ、
両手で抱えるぐあいに休んでいました。
ら、
後ろからぺちゃくちゃと、
ケチャケチャと、
ケチャケチャケチャケチャと、
早口のさえずりが聞こえてきました。
小声なので、
内容までは分かりませんが、
延々さえずっています。
そのトーン、早口度、
庭にまかれたニワトリの餌状態のぱらついた言葉、
まさに松野明美でした。
顔が似ているということは、
ほかの行為、動作も似ているということなのでしょう。
でも、
これほどまでとは思いませんでした。

・狂ひ空灼熱地獄熱帯夜  野衾

日々の泡

 

・夕立に日中の汗流したる

いただいた原稿をアタマからていねいに読み、
チェックしていく作業は、
とっても地味で、
いわゆる「編集者」のイメージとは
かけ離れているのではないでしょうか。
しかし、
硬い地面を掘り起こすようなその作業のなかにも、
微かな笑いや癒し、
息抜きがないわけではありません。
たとえば、
戦前の非行少年に関する原稿で、
花島政三郎先生の文献に触れられている箇所がありました。
花島先生は、
宮城教育大学におられた方です。
その花島先生の「花」がなぜか「北」になっていました。
たしかに「花」と「北」は、字の形も似ています。
間違えたのが原稿を執筆した本人か、
依頼された入力者かは分かりませんが、
(執筆者とは考えにくく、
おそらく入力した方でしょう)
いずれにしても、
苗字に「島」が付く三郎といえば、
北島三郎!という、
その思い込みが指先を誤らせた、
に違いありません。
「北」を赤のボールペンで「花」に直しながら、
間違えて入力した、
逢ったことのない名前も知らないその方と、
コーヒーでも飲みながら、
しばし歓談した気になりました。
そんなことはだれでもやる間違いです。
目くじらを立てるほどのことではありません。

・露零し嘗めてしょっぱき左腕  野衾

喫茶セブン

 

・暑き夜闇に八つの眼が光る

横浜タカシマヤ七階にある喫茶店。
店の名前が喫茶セブン。
七階にあるから喫茶セブン。
ちょっと安直か。
でも、おぼえやすい。
打ち合わせのために初めて入りました。
店内が割と広く、
大きなテーブルが設えられているため、
話すにはもってこい。
ホットコーヒーをたのんだのですが、
とても美味しく、
お代わりをしました。
税込み五二五円也。
静かだし、
横浜駅のすぐ近くだし、
これからちょくちょく使おうと思います。

七月二三日付け秋田魁新報文化欄に、
拙稿「根のある人 中村千代松「随感録」」
が掲載されました。
コチラです。

・カブトムシその甲冑の艶やかさ  野衾

Archives

You are currently browsing the 港町横濱よもやま日記 blog archives for 7月, 2012.

三浦衛(みうら・まもる) 春風社代表にして自慢大王&悪ノリ大王。体調のいいときは自らを天才と称し、不調の折はちりあくたにも劣るヤツとしょんぼり。

2012年7月
« 6月   8月 »
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  
過去の日記
最近のコメント
三浦衛の本


『カメレオン』
 三人ときどき声にならぬ声を洩らし/とろけ とろけ 唾までとばし/クヂるとナメるとネヂるとチョす…(「鳶」) 自在に色を変え、不意に突き刺さる、軽妙なことばの戯れ。秋田方言満載の詩集。本文は金属活字による活版印刷。


『マハーヴァギナまたは巫山の夢』
 三平佐世夫は、千一夜の夢うつつで女と戯れ、印度に旅し、睾丸を抜かれ、鰐を飼い、横浜を彷徨う。言語の崖っぷちを綱渡りする、めくるめく冒険。本文活版印刷に美麗造本を施した平成の大奇書。


『父のふるさと』
 父の目に映じた故郷の風土、ひと、くらし、農事を、愛惜をこめ描きだす。本文は金属活字による活版印刷。「身と蓋函」に納める。


『出版は風まかせ』
 横浜の出版社「春風社」社長が本づくりと会社経営にまつわるエピソードを豊富におりまぜ、創業から10年を振り返る。