つ、ついに

 

・雨なれば三善英史を口ずさむ

昨日、
二〇一二年六月二五日、
金沢八景駅で京浜急行上り普通電車に乗ったところ、
ミル貝のように脚を伸ばした野球少年から、
席を譲られました。
人生初。
お礼を言い、
丁重にお断りし、
わたしは立ち続けました。
春風社から本を出している著者で、
電車内で初めて席を譲られ、
三日寝つきが悪かったという方もいらっしゃいますが、
きのうは酒を飲んだせいもあってか、
わたしは別にそんなことはありませんでした。
席を譲られたのも、
わたし一人だったらどうだったか分からないと、
自分を慰めています。
実は、
事が起こったのは、
専務イシバシと二人で横浜市立大学へ行った帰りでした。
電車に乗ったとき、
端っこの座席が一つだけ空いており、
イシバシに座るように言いました。
イシバシがシートに座って間もなく、
ミル貝の脚の野球少年が立ちましたから、
わたしとイシバシを夫婦連れとでも思ったか、
少なくとも他人同士ではないと感じて、
それならば、
一人が座ってもう一人が立っているのは気の毒と、
心のやさしい少年は席を譲るべく
立ち上がったのかもしれません。
ま、
そんなふうに思考をめぐらすところを自ら分析すれば、
席を譲られたことが
いささかショックであったことの証拠でしょうか。
いずれにしても、
電車内で初めて席を譲られた記念の日として
記憶にとどめておこうと思います。

・勘違い電車降りるもまた乗った  野衾