五月闇

 

・天竺の空や遥かに五月闇

五月闇と書いて、さつきやみ。
夏の季語です。
愛用している『合本 俳句歳時記 第三版』(角川書店編)
によれば、
「五月雨、つまり梅雨のころは暗雲が垂れ、
夜はあやめもわかぬ闇となる。
梅雨闇などともいう。」
あやめもわかぬは、
文目も分かぬ、
模様も分からぬほどの漆黒ということでしょうか。
日本の五月闇とインドの闇では同じか違うか。
そんなことを思い、
このごろ闇に向かって目を据えています。
私見をいえば、
インドの闇のほうが、
もっと厚みがあった気がします。
それに、
輝いていました。
輝く闇。
それに対して日本の闇は、
同じ闇でも
厚みを感じさせず、
風通しがいい。
人も時も吸い寄せられていきそうです。
そこから現れ、そこへ消える、
海ならなぎさ、
陸ならくさむらでしょうか。

・遠雷や玄奘の途はるかなり  野衾