ちあきなおみ

 

・振り向かずサッと手を挙ぐ五月闇

昼、
行きつけの食堂で新聞を開いたら、
ちあきなおみのCDの広告がでていました。
復刻版です。
また、
ちょうどきのうのこと、
新聞広告とは別のちあきなおみのCDの案内が
アマゾンからメールで届きました。
彼女が歌をやめてから今年で二十年になるはずです。
それでも、
かけがえのない彼女の歌を聴きたくて、
むかしの音源に耳を傾け、
こころを寄せている人がそれだけ多いということでしょう。
わたしもその一人です。
洟垂らしの頃は、
彼女の歌のよさが分かりませんでした。
それがこのごろはよく聴いています。
彼女の歌、声を聴いていると、
胸にたまったしこりが次第に融けていくようです。
やがて、
からだの芯がほっこりしてきて、
われ知らず目頭が熱くなっていることに気づきます。
息が深くなり、
いろいろいろいろあるけど、
憂さの捨てどころなどどこにもないけど、
人に言われるまでもなく、
生きているあいだ、
生きているあいだは、
ほんとうにがんばらねばという気になります。
歌で癒される、
歌でしか癒されない
こころの領域がたしかにあるようです。
「ちあきなおみさん歌って国民運動」を
おごさねばだめだなと、
石巻出身のカメラマン橋本照嵩さんと
涙ながらに気勢をあげた夜でした。

・紅とんぼ聴きて慰む夜もある  野衾