イシバシ節炸裂

 

 万緑の中や吾の歯が痛い

久々の専務イシバシ話。
イシバシ、ゴールデンウィーク明け
すぐに九州方面へ営業に出向きました。
九十九里浜出身ならではの漁師的感を働かせ、
あちらこちらの大学を訪問し、
仕事を取ってきました。
自分なりにも満足し、
少し足を伸ばして大好きな
平戸島に一泊しようと思い立ち
はしたものの、
宿を探してもなかなか見つからず。
人に訊くか調べるかして、
平戸○○ユースホステルというのがあることを知ったイシバシ、
ふつうユースホステルというのは
若者が泊まる宿との認識はあったが、
平戸島でどうしても一夜を明かしたい。
タクシーを駆って本土から平戸大橋を渡り一路平戸島へ。
が、
いくら探しても平戸○○ユースホステルが見つからない。
いや、そんなことはない、きっとあるはずだ。
どこだ、どこだ、どこだ。
でも、やっぱり、どこにも見当たらず。
精も根も尽き果て、
平戸○○ユースホステルに電話。
「あの~、いま、平戸島にいるんですけど、
いくら探しても平戸○○ユースホステルが見つからないんですけども…」
「え。あ。平戸島にはありませんよ」
「なぬっ。平戸島にないんですか」
「はい」
「だって、平戸○○ユースホステルでしょ」
「はい」
「平戸○○ユースホステルが平戸になくて、どこにあるんですか」
「本土のほうにあります」
「え。本土にあるんですか」
「はい」
「おかしいでしょ。平戸○○ユースホステルというから
平戸島にあると思うじゃないですか。
タクシーを飛ばしてわざわざ本土から来たんですよ」
「そうでしたか。恐れ入ります」
ということで、
イシバシ、
またタクシーを駆って本土にある
平戸○○ユースホステルに向かったのでした。
その話をイシバシ本人から聞き、
彼女の口吻とつりあがったまなじりが目に浮かぶようで、
野毛の通行人たちが振り向くほど呵呵大笑、
笑わずにいられませんでした。

下の写真は、“博多一の料亭”と名高い「とり市」でイシバシが撮影した稚鮎。
フランスの名匠ルコント監督の小説『ショートカットの女たち』『リヴァ・ベラ』
の翻訳者桑原隆行先生との会食にて。
(対応してくれたくるみさんがたいそう可愛かったそうです)

 新緑や滴をあつめ洗ひたし  野衾

大衆割烹尺八

 

 青葉より光零るる三渓園

きのうの昼休み、
清野とおるさんの漫画『東京都北区赤羽』③
を読んでいたら、
赤羽時代にほぼ毎日通っていた「大衆割烹尺八」
の看板が描かれていて、
嬉しいやら、懐かしいやら。
いやはや驚きました。
十年間の幻が現実となって眼に焼きつきました。
店の名前「尺八」は「たけ」と読みます。
ご主人の川俣さんは山形県ご出身。
琴古流尺八の名人で、
たしか人に教えてもいたはずです。
以前勤めていた会社の社長の大のお気に入りで、
仕事の打ち合わせで赤羽に来られたお客様をよく案内しました。
昨年春風社から本を出した紀田順一郎さんとも、
教育者の大村はまさんとも、
「尺八」の店で、
山形名物玉コンニャクを頬張りながら、
お話させていただきました。
懐かしい。
数年前、
スナックで働いているゆいちゃんから電話があり、
「尺八」が閉店することを知りました。
出勤前のゆいちゃんは、
「尺八」の店から電話をくれたのでした。
電話を替わった「尺八」のマスターと互いの労をねぎらい、
最後にマスター曰く、
「元気だったら、またどこかで会おう」
最終日とあって客でごった返し、
ゆっくり話ができず、電話を切りました。
出版の企画で、
日本の童謡を尺八で演奏してテープに吹き込み、
本のオマケとして付けるため、
日曜日に一日かけ、
わたしと二人で収録したことがありました。
夜になってようやく終り、
へとへとになったマスターがポツリポツリと、
「く・ぢ・び・る・が・う・ご・が・ね・ぐ・な・た」
笑ってはいけない場面でしたが、
鬼瓦みたいなマスターの顔の
唇だけが別の生き物みたいに紅潮していて、
笑わずにいられませんでした。
懐かしい。

 言はねどもパッと物言ふさつきかな  野衾

清野とおるさん

 

 こころまで汗を掻き掻き空ろなり

東京都北区赤羽の街と人を描く漫画『東京都北区赤羽』
が大ブレイク中の清野とおるさんが、
今月横浜にいらっしゃいます。
わたしがインタビュアーを務めるトークイベントに、
ゲストとしてご登場いただきたい旨をお願いしたところ、
快く引き受けてくださいました。
ゲストはもう一人。
神奈川新聞社の佐藤将人記者です。
佐藤さんは、
ご存知『突撃! よこはま村の100人 自転車記者が行く』
の著者です。
二人のゲストといっしょに、
「街を歩けば人にあたる」をテーマに、
たのしくおしゃべりしたいと思います。
むかし、
「大きいことはいいことだ」
というコマーシャルがありましたが、
もうそんな時代ではありません。
大きいものより小さいもの、
新しいものより
古いものにこそいいところがあり、
安心します。
人はせいぜい二メートルぐらいしか伸びないのだし、
機械みたいに新しくもなれないのですから。
さて、
「街を歩けば人にあたる」のトークイベントは、

 ●日時 5月25日(金)午後8時~
 ●場所 春風社
 ●会費 千円

どうぞ、ふるってご参加ください。

 字を読みてエネルギーまで吸ひ取られ  野衾

共感の物語

 

 わくわくとひっくり返す衣更え

東京都北区赤羽の街と人を描く漫画『東京都北区赤羽』
が大ブレイク中の清野とおるさんに、
神奈川県横浜市の街と人を取り上げ、
この度『突撃! よこはま村の100人 自転車記者が行く』
を上梓し大ブレイク予定の佐藤将人記者がインタビューしました。
その記事が、
今月二日の神奈川新聞に掲載されました。
コチラです。
町おこし、村おこしが叫ばれてから久しく、
それなりに実績を上げているところもあるようですが、
二人の対談を読むと、
街の面白さの基本は人である、
ということに改めて気づかされます。
街の面白さ、人の面白さを描くことにおいて、
二人は共通していますが、
その前提にあるのが「共感」ということも頷けます。
共感の欠けた時代に、
二人のつむぎだす物語が輝いて見える所以です。

 半袖を着て十歳は若返る  野衾

回転寿司屋にて

 

 散る花のふるさとの果て陶淵明

長い連休が終り、今日から仕事。
頭を切り替えなければいけないのですが、
まあ、ぼちぼちと。
さてこの連休、
わたくし早々に秋田へ帰りました。
ふるさとの最寄り駅井川さくらまで、
父と母がいつものように車で迎えに来てくれました。
家人と後部座席に乗り込むと、
車は国道七号線を一路八郎潟方面へ。
これもいつもの通り。
ほどなく道路脇の回転寿司屋に到着。
駐車場に車を停め、
四人揃っていそいそと暖簾をくぐり、
案内されるままカウンターに並びます。
イカやエビやタコやウニやイカやエンガワやカニやイカを頼みます。
父もわたしもイカが大好物。
なので、どうしても、
ポイントポイントでイカを頼むことが多くなります。
父が突如、
「ゴルバッチョください」
なかで働く若い職人さんはキョトンとしています。
父はなおも
「ゴルバッチョくださいゴルバッチョ」
職人さん、ようやく気づいたらしく、
「ああ。カルパッチョですね」
父、「は! なんて?」
「カルパッチョですね」と職人さん。
「ゴルバッチョじゃないの? ははは…。
まあ、どっちでもいいけど。
それを一つください」と父。
対応してくれた職人さんだけでなく、
他の職人さんも側にいたお客さんも笑っています。
父も母も大笑い。
わたしも家人もつられて大笑い。
場内はまさに笑いの渦。
分かりやすい言いまちがいです。
ゴルバチョフ+カルパッチョ=ゴルバッチョですから。
こうして連休の幕は明けました。

 もののふの集ひし里の五月かな  野衾