ましゅぐなれ

 

 冬の朝ページするりと滑りけり

わたしのふるさとでは、
腰抜け、臆病者のことを「ましゅぐなれ」と言います。
「ましょぐなれ」とも言うようです。
死ぬ直前の祖父に向かい、
父は「ましゅぐなれ」と叫び、
涙ながらに体の表と裏を拭いてあげていました。
忘れられません。
秋田の無明舎出版から上梓されている『秋田のことば』に、
語源が出ていました。
「生まれ損ない」が元だというのです。
鹿角を除く県全域に分布していると記されています。
さっそく父に電話して確認したところ、
元の意味までは知りませんでした。
自分の親に対して父は、
「生まれ損ない」と叫んでいたことになります。
言われた祖父も、
意味を知っていなかったでしょう。
「ましゅぐなれ」に似た言葉に
「だんこのげ」あるいは「だんこぬげ」があります。
脱肛が元の意味で、
腰抜け、臆病者、弱虫の意で使われます。

 寒空や神の魚の踊るころ