けがぢ

 

 鐘聴けば柿の食ひたき心地して

引きつづき伊藤永之介。
伊藤は、秋田市出身の作家。1903年(明治36)生まれ。
凶作という単語に「けがち」というルビが振ってあり、
さっそく秋田の父に電話。
凶作のごどを秋田で「けがち」て言うが?
「けがち」でなぐ「けがぢ」なら言う。
ああ、やっぱり。
ところが、大辞林を引いてみても出ていません。
ひょっとしてと思い、
佐伯梅友・馬淵和夫編、講談社古語辞典を引いてみました。
すると、
けかつ【飢渇】〔「けかち」ともいう〕腹が減り、
のどがかわくこと。飢えとかわき。
「二年が間、世の中飢渇して、あさましき事侍りき」<方丈記>
とあるではありませんか。
凶作になれば、食い物がなくなり、腹が減ればのども渇く。
だから秋田では凶作のことを、
けがち、けがぢと呼んだのでしょう。
ていうか、
そういう使われ方をしていた言葉が、
秋田に残っているのでしょう。
方丈記の鴨長明といえば、京都の生まれ。
十二世紀半ばから十三世紀の初めにかけて生きた人。
当時にあった、しかも京の言葉が
秋田に残っているというのがおもしろい!
どうやって伝わったものか、
いろいろと想像が働きます。
明日行われる「読書のつどい2011 in 秋田、
ふるさとと本を語る~文学・出版・映像の響き合い~

では、そんなことも話題に上るかもしれません。
場所は、秋田県生涯学習センター(秋田県立図書館の隣)
午後1時から。
お近くで興味のある方は、どうぞ。

写真は、ひかりちゃん提供。
「けがぢ」とは特に関係ありまません。

 色付きて風を招きし薄かな