ファイル整理

 

 白々と秋風色に出でにけり

今月は、
社内の大掛かりな模様替えをすることになっており、
それに合わせ、古いファイルの整理をしています。
佐々木光郎さんの『いい子の非行』が出たのが二〇〇一年、
もう十年前になります。
ファイルには、
印刷所への見積り依頼書、見積り、台割、
読売新聞への二度の広告、新聞社への書評依頼、各紙書評、
出版後の著者へのインタビュー記事等々、
本づくりの記録が収められていました。
なかに、一枚の手紙がありました。
ふるさと井川町の役場に勤めておられる方のものでした。
役場の助役さんが、個人で五冊買ってくださり、
それを役場の人に誇らしく見せていたことが記されています。
わたしが自転車に乗り始めた頃、
よろよろと走って苗代に突っ込んだとき
助け起こしてくださったあの助役さんです。
なつかしく思い出しました。
助役さんは数年前、
一人で山菜を採りにいき、
山から滑り落ちて亡くなりました。

 宝本裁ちて身に染む月夜かな