鍼とUFO

 

 しがみつきそうはさせじと残暑かな

月に二度、
忙しいときでも月に一度は鍼の施療院に通います。
カーテンで仕切られたスペースが三室あり、
予約の状況でどの室に入るかはその都度ちがいます。
カーテンで仕切られているだけですから、
声も鼾も筒抜けです。
顔を知らず、
声だけ馴染みの若い女性がいて、
彼女と鍼の先生の間でわたしは
「石のおじさん」ということになっているそうです。
パワーストーンの話をかつてしたからでしょう。
それはともかく。
彼女はよくUFOをみるらしく、
室に入るなり、
「先生、またUFOを見ましたよ」と先生に告げています。
「え。また見たの?」と先生。
疑う様子は露ほどもありません。
わたしは羨ましくなりました。
一時間の針治療を終え、
東横線とJRの電車を乗り継ぎ保土ヶ谷まで。
帰宅後昼食を取ると、猛烈な睡魔に襲われます。
布団に倒れこむようにして眠ったようです。
ケータイが鳴り、目を覚ましました。
ふと思い出し、
空を眺めましたが、
UFOが浮かんでいる様子はどこにもありません。
見ようと思って見られるものでないと、
彼女がたしか言っていたような。

 鳴き終えて真っ二つのアブラゼミ