カマドウマ

 

 空蝉や時を抱へて光りをり

漢字で書くと、竈馬。別名便所コオロギ。
秋田では見たことがなく、
仙台で暮らすようになり初めて見たときは、
ぶったまげました。
背中の曲がり具合がはんぱじゃなく、
そこに力の全てを充填しているようで、
そのジャンプ力の爆発たるや並大抵ではありません。
下呂温泉湯之島館のカフェテラス樹庭にて、
朝早く、
他に客はなく、
一人静かにコーヒーを飲み外の景色に見とれていると、
足下の影が微かに動いたようで、
見遣れば、
大ぶりのカマドウマが
触覚をワラワラ動かしているのでした。
デ、デカ!!
スリッパを履いた足先をそうっと近づけると、
触覚をさらに激しく動かし、
いよいよ跳ぶかと思いきや、
ゆっくりと回れ右して暗い細い隙間に入り込んでいきました。
ほっ!
寝起きで跳ねる気がなかったか?
おかげでこちらは眼が覚めました。

 杉木立ツィプレッセンの九月かな