気功ダイエット

 

 夜半すぎ起きてまた寝る残暑かな

この頃気功教室に来られる方で、
初め少々太り気味かなと思われた男性がいます。
それが教室の度にスリムになり、
今はすっきりと男も惚れる(惚れないけど)青年に変身。
いやあ、驚きました。
気功、恐るべしです。
おそらく、家でも欠かさず続けているのでしょう。
わたしの隣で体を揺らしていることもあり、
ふと見れば、
額に、首に、玉の汗を浮かべています。
動きも初心者と思えないぐらい滑らかです。
気功ダイエットを目の当たりにしました。

写真は、りなちゃん提供。

 ジグザグと日陰選んで歩きをり

次なに読もうかな

 

 紅葉坂上り下りの残暑かな

本は、読んでいるときが一番たのしく、
読み終わった達成感は喜ばしく、
同じ本を読んだ人との語らいもまた一興、
ではありますが、
次なに読もうかなと考える時間はさらに格別。
本など読まなくてもいい、
遊びに行くのもいい、
寝転がっているだけもいい、
しなければいけない仕事もある。
でも、やっぱりなにか読むか、
読むならなに?
昔読んだ本をもう一度読んでみるか、
それとも書評で出ていた新刊?
それをポレポレ考える時間が楽しくありがたい。
ポレポレ。ポレポレ。
田中さんはポロポロで。
なにか、こう、
ほどかれて自由な感じとでもいうのか、
晴れ晴れした気持ちに浸れます。
温泉の露天風呂でポレポレ、みたいな。
それを味わいたくて本を読む、
ということもあります。

写真は、りなちゃん提供。

 二階にて師と差し向かふ泥鰌鍋

鬼?

 

 物言はぬ時を楽しむ月夜かな

社内模様替えに合わせ、
机の中、周りを順に片付けています。
手紙は手紙で箱にまとめてあるのですが、
いい機会ですから、
古いものから読み直し、
これからの仕事に直接関係ないものは、
心を鬼にして捨てることにしました。
とは言うものの、
たとえば、
秋田出身の教育者、児童文学者である
故・滑川道夫先生からいただいたお手紙など、
どうしても捨てることができません。
前の出版社にいたとき、
社長に連れられご自宅を訪問した際、
新井奥邃の名を口にするや、
先生、ぐっと身を乗り出し、
奥邃の高弟である大山幸太郎について
縷々教えてくださいました。
わたしの口から奥邃の名が出たことに
驚かれているご様子でした。
それが縁で後日、
滑川先生を奥邃の墓にお連れしました。
お手紙は墓参のお礼と、
そのとき先生が写した写真が添えられています。
鬼の心になっても、
それを捨てる理由が見つかりませんでした。
さて、
写真集『クジラ解体』の書評が東京新聞に掲載されました。
コレです。
高価な本なので、
個人ではなかなか手が出ませんが、
このところ、図書館からの注文が続いており、
どこまで続くか楽しみなところです。

写真は、りなちゃん提供。

 ジョバンニの時空に揺れる芒かな

ファイル整理

 

 白々と秋風色に出でにけり

今月は、
社内の大掛かりな模様替えをすることになっており、
それに合わせ、古いファイルの整理をしています。
佐々木光郎さんの『いい子の非行』が出たのが二〇〇一年、
もう十年前になります。
ファイルには、
印刷所への見積り依頼書、見積り、台割、
読売新聞への二度の広告、新聞社への書評依頼、各紙書評、
出版後の著者へのインタビュー記事等々、
本づくりの記録が収められていました。
なかに、一枚の手紙がありました。
ふるさと井川町の役場に勤めておられる方のものでした。
役場の助役さんが、個人で五冊買ってくださり、
それを役場の人に誇らしく見せていたことが記されています。
わたしが自転車に乗り始めた頃、
よろよろと走って苗代に突っ込んだとき
助け起こしてくださったあの助役さんです。
なつかしく思い出しました。
助役さんは数年前、
一人で山菜を採りにいき、
山から滑り落ちて亡くなりました。

 宝本裁ちて身に染む月夜かな

鍼とUFO

 

 しがみつきそうはさせじと残暑かな

月に二度、
忙しいときでも月に一度は鍼の施療院に通います。
カーテンで仕切られたスペースが三室あり、
予約の状況でどの室に入るかはその都度ちがいます。
カーテンで仕切られているだけですから、
声も鼾も筒抜けです。
顔を知らず、
声だけ馴染みの若い女性がいて、
彼女と鍼の先生の間でわたしは
「石のおじさん」ということになっているそうです。
パワーストーンの話をかつてしたからでしょう。
それはともかく。
彼女はよくUFOをみるらしく、
室に入るなり、
「先生、またUFOを見ましたよ」と先生に告げています。
「え。また見たの?」と先生。
疑う様子は露ほどもありません。
わたしは羨ましくなりました。
一時間の針治療を終え、
東横線とJRの電車を乗り継ぎ保土ヶ谷まで。
帰宅後昼食を取ると、猛烈な睡魔に襲われます。
布団に倒れこむようにして眠ったようです。
ケータイが鳴り、目を覚ましました。
ふと思い出し、
空を眺めましたが、
UFOが浮かんでいる様子はどこにもありません。
見ようと思って見られるものでないと、
彼女がたしか言っていたような。

 鳴き終えて真っ二つのアブラゼミ

ムカデか!?

 

 墓参り明けて無人の墓に立つ

夜中、首の辺りや腹の上が何やらむずむずし、
夢うつつの状態ではっしと払いのけるとムカデだった、
ということがこれまで何度かありました。
布団を干した日の夜に多くそれは起きました。
昨夜、
ちょろちょろと目が覚めたか覚めないかの際で、
腹の上をはらりと何かが動いた、
気がしました。
あ、ムカデだっ!!
バシッとそのあたりを盲滅法に払いました。
明かりを点けたら、
いるべきはずのムカデがいません。
そんなはずはないのですが、
いくら探しても、いません。
どうやら、
パジャマの半ズボンに付いている紐の端が、
寝返りを打った際、はらりと落ちたようです。
わたしはムカデが嫌いです。

 手をかざし踊り踊るや生御魂

運動会用足袋

 

 秋の夜のしみじみ古き活字かな

スポーツの秋にちなみ。
小学生の頃、
秋の運動会にはそれ用の足袋を履きました。
その季節になると、
学校近くの店でどっさり売っていました。
ぺらぺらとおもちゃのスルメみたいで、
正確な金額は忘れましたが、
運動会後には捨てるものだし、
たいして高くはなかったはずです。
あれを履くと、
足が妙にぴょんぴょん飛び跳ねるようで、
感覚としては、
裸足よりも軽い気がしたものです。
お日様がいつもより眩しく感じたり。
足が軽すぎて、
よく転びました。
オリンピック100メートル決勝、
ボルトが足袋で走ったら面白いだろうなあ。

 秋風や空っぽ何をするでなく