「読みたい」が詰まった本

 

 ぶりかえす暑さに空を睨みをり

学生のときに買って、
ずっと読まずに持っていたのですが、
病気をして本が読めなくなり、
少しずつ回復した後も、
もう読むこともないだろうと思い、売ってしまいました。
ところが、
おかげさまで元気になり、
『源氏物語』を二十数年ぶりに読み直し、
時間感覚を意識したせいか、
今度は空間感覚とでも言ったらいいのか、
世界の広さを教えてくれそうな本を読みたくなりました。
会社のテラチーから借りた
クラフトエヴィング商會の『おかしな本棚』に、
本棚には、
本を読もうと思ったときの楽しさが並んでいて、
本棚を眺めれば、
その時々の「読みたい」が鮮やかによみがえる、
だから、読まなくてもいいんだというようなことが書いてあり、
その通りだと思いました。
『野生の思考』は、わたしにとりまして、
まさにそのような本で、
何が書かれていても、たとえ書かれていなくても、
これを読もうと思ったときの「読みたい」が詰まっています。
「読みたい」気持ちに別れを告げ、
今度こそ本当に読もうと思います。
読まないかもしれないけど。
次号「春風目録新聞」の特集は、
「今、読みなおす本」
精神科医の中井久夫さんから素敵なお原稿を頂戴しました。

 静けさや階段尽きて汗の道