遠方より

 

 アメリカの友と語らふ香遣香

弊社創業間もない頃、
旧来の友人たちにお願いしエッセイを書いてもらい、
ホームページにアップしていました。
「腰振るアリゾナ」を書いてくれたのは久保田さん。
「裸足のキャンベラ」は神谷さん。
数年ぶりに二人に会いました。
久保田さんは飛行機部品の製造会社に勤めていましたが、
二年前に独立し、コンサルティング会社を立ち上げたそうです。
神谷さんは今日本に住んでいますが、
ご主人は二年間チリ出張だとのこと。
久しぶりでしたが、すぐに意気投合。
よもやまのことに話が弾み、
酒がすすむほど、
人生の短さを思わずにはいられませんでした。
読む本と会う人を大事にしたいと思います。

 生尽きし声なき龍馬蝉の群れ

模様替え

 

 生も死もむっつり顔のアブラゼミ

横浜市教育会館に春風社が引っ越したのが2002年。
あれから九年経ちました。
会社を起こした当時、
瀬谷にあるセレクトという中古オフィス什器店に、
創業メンバーの三人が十万円持って
出掛けたことがなつかしく思い出されます。
翌年二十万円。
翌々年三十万円。
ネットで調べたら、
変わらずに営業しているようです。
今のところに移転してからも継ぎ足し継ぎ足しで来て、
よく考えればもっと便利な配置なり、
スペースの有効な使い方がありそうです。
木の机が入ることになり、
せっかくですから専門家にこちらの希望を伝え、
レイアウトを考えてもらうことにしました。
一級建築士の竹田さんは、
母校がわたしと一緒ということもあり、
親しみがもてます。
気分を一新し、
さらに労働集約型の集中した仕事をしたいと思います。

 木々ありて蝉をぶらさげ重くなり

クリエイティブ

 

 絵日記を最後仕上げた夏休み

念願だった木の机を買おうと思います。
春風社の真ん中には楠のテーブルがありますが、
木の机が入れば、
ますます工房っぽくなりそうで楽しみ!
クリエイティブということを、
このごろ考えることがあって、
クリエイティブな佳きアイディアは、
内から湧くのでなく、
外から来るものだと感じます。
有無を言わせずクリアに。
お客さんもアイディアも、外からやってきます。
仕事はその結果ですから、
そのためにも、
身の回りを美しく、
自然をなるべく多く取り込み迎えたいと思います。

絵は、家人の姪のさきちゃんが描きました。

 アブラゼミ全身生を叫びけり

おふくろの味

 

 盆踊り闇はますます深くなり

田舎の味噌汁がすべてそうだとは思いませんが、
母の作る味噌汁は具が多い。
思い出せば、
亡き祖母が作る味噌汁もそうでした。
自家製の野菜を入れることが多く、
必然具沢山になるのかもしれません。
子どもの頃、
それが面倒臭くてしょうがなかった。
食べても食べても具がなくならない。
どうなってるんだ、って。
具の少ない、
例えば大ぶりのハマグリ一個が入っているのみの、
あとはだし汁だけというお椀にあこがれたものでした。
それが加齢のせいか、
田舎に帰って具沢山の味噌汁が出てくる度、
一切れ一切れの具を味わいつつ、
なかなか減らない味噌汁を楽しんでいます。
朝の味噌汁の湯気は、まるで魔法の煙。
なにかいいことが起きそうな気さえしてきます。

 天よりの滴湛えし稲穂かな

目玉焼き

 

 秋の田を風ささやきて渡りけり

ふだん朝は食べないのですが、
帰省したときだけ、朝、食事をとります。
その一番の理由は、
父が飼っている鶏の産みたての卵の目玉焼きが食べたいから。
記憶している目玉焼きの味そのまま。
昔の農家はだいたい鶏を飼っていて、
卵を買うなんてことは少なかっただろうと思いますが、
近頃はとんと見かけなくなりました。
わたしの実家では、
祖父の代からずっと鶏を飼っていて、
祖父亡き後、今は父が引き継いでいます。
なんで鶏を飼わなくなったんだろうと父に尋ねると、
祖父の代からのことで、
あたりまえに見えるだろうが、
生き物を育てるというのは、
鶏に限らずなかなか難しいものだとのことでした。
炊き立てのご飯の上に目玉焼きを乗せ、
箸で割って醤油をかける。
ご飯と一緒に食べれば、口中ほんわかお祭り気分。
これぞニッポンの朝食!
よし、今日も頑張るぞー、
となるわけです。

 近づきて誰が誰やら盆踊り

夏季休暇

 

 一年を盆を境に折り返す

今日から待ちに待った夏休み。
十五日までお休みをいただきます。
体を休め、心の栄養を補給し、
息切れしないよう後半戦に臨もうと思います。
今年は春風社始まって以来の刊行点数の多さですが、
書評で取り上げられた数もこれまでで最多でしょう。
日本図書館協会選定図書にえらばれた数は、
通算で一〇五点を超えました。
選定図書に選ばれるのは、
全体の16%だそうですが、
弊社の場合、27%が選ばれています。
このごろ書評で取り上げられた刊行物を紹介し、
前期の締めくくりにしたいと思います。
写真集『クジラ解体』が「新文化」に取り上げられました。
書いてくださったのは冨田薫(とみた・たぎる)さん。
『こんにちはチェホフ! 三つの短編を訪ねる』が
神奈川新聞」に取り上げられました。
二つとも、本の心を深く汲んでくださり、
ありがたく思います。

 山寺に行きたし遥か蝉の声

盆の十三日

 

 蝉時雨祖父母の墓へ帰る道

お盆の何やら弾むような楽しさを思うと、
「盆の十三日 正月から待ってた」の言葉が浮かんできます。
亡くなった祖母が口にしたのを聞いたような。
ぼんやりした記憶です。
あの言葉、なんだったのか。
今はインターネットがあるので、とても便利です。
分からないことがあれば、
すぐに調べられます。
わたしの故郷秋田県井川町の隣は八郎潟町ですが、
そこの一日市(ひといち)盆踊りは古くから有名で、
その歌い文句のなかに、
上のせりふがあるようです。
でんでんづくづー でんづくづー

写真は、なるちゃん提供「アピオスの花」

 日と闇と積もり積もりて夏の朝