散髪

 

 春霞鼻も目覚める花粉症

本を読んでいたら、
頭が痒くなってきまして、
さっそく電話をすると、
すぐにやってもらえるということなので、
急いで着替えて外に出ました。
長い階段を踏み外さぬように気をつけながら駆け下り、
鎌倉街道沿いを上って下れば目的の床屋です。
窓からご主人の姿が見えます。
テレビを食い入るように見ています。
「ちわー」
「どうぞ」
「すみません。急で」
「いえいえ。ちょうど空いたところでしたから。
余裕があれば、ボランティアに行くんですけれどね。
髪を洗えなくても、トニックをかけて、
マッサージするだけでサッパリしますから」
電気バリカンで髪を刈り、
頭を洗ってもらい、
二十分ほどで出来上り。
「今日は五人目です。
先月は良かったけど、今月は、またダメです。
来月から老人ホームへ行くことになりました。
コンビニのアルバイトに毛が生えたぐらいにしかなりませんけどね」
代金を払い外へ出、
一瞬右へ行こうかと思いましたが、
気が萎え左へ曲がり、
まっすぐ階段に向かいました。

 色をつけやがて匂へよ沈丁花

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揺れる日常

 

きのうは、週に一度の気功教室の日、
いつものように、少し早めに退社したのですが、
横浜駅のあまりの混雑に恐れをなし、
帰れなくなるのでは、の不安がよぎったので、
急遽、教室を休むことにしました。
小・中学校が皆勤のわたしとしては、
休みたくなかったのですが、
いたし方ありません。
ホームはこぼれるぐらい人が溢れていました。
電車を二本やり過ごしてやっと乗れました。
なだれのように後ろから押され、
とっさに座席横の鉄棒を右手でつかんで体を支え、
空間を作ろうとしたのですが、
あまりの圧力で腕が折れそうになりました。
最後に乗った女性の鼻筋に汗が浮かんでいます。
保土ヶ谷駅に着き、
やれやれとぷらぷら歩いていたら、
腹が減ってきたので、
保土ヶ谷橋の交差点を渡って右手すぐのコンビニに寄ると、
棚からごっそり食料がなくなっており、
買い物客が長蛇の列をつくっています。
素材にも仕上げにもこだわりましたの
あたりめソフトフライ「いか天大王」と
マカデミアナッツのアイスクリームを購入し、
スイカのカードで支払いを済ませ、
店を出てすぐ「いか天大王」の袋を破り、
二、三本摘まんでむしゃむしゃ頬張り、
空中の放射線量のことを思いながら暗い階段を登りました。
夜中、北京に居る友人から電話がありました。

計画停電

 

東京電力による計画停電が実施されており、
平常に戻るまで場所を移して業務をしては、
とのありがたいお申し越しもいただいておりますが、
弊社のある横浜市西区は、
計画停電の対象地域から除外されており、
今のところ業務に支障はございません。
お心遣いに感謝いたします。

カメラマンの橋本さんのお兄様(石巻市)が、
市役所に避難されていることが分かりました。
まずは無事でよかったです。

放射能漏れ

 

福島の原子力発電所の事故について、
連日報道されていますが、
当初、放射線量を表す単位としてマイクロシーベルト
を使っていたのに、
いつの間にか、ミリシーベルトに変りました。
1ミリシーベルトは1000マイクロシーベルト。
きのう、福島第1原発で一時400ミリシーベルト、
30キロ以内は屋内退避という指示が出されました。
400ミリシーベルトは40万マイクロシーベルトです。
テレビではさかんに、
レントゲン写真、CTスキャンなど、
日常生活で浴びる放射線量との比較がなされていますが、
それはそうかも知れませんけれど、
レントゲンもCTスキャンも短時間のはず。
仮に微量の放射線でも、
長時間にわたって浴びたらどうなるんでしょうか。
きっこさんの「きっこの日記」には、
放射能放出は何ヶ月も続くという
13日付ニューヨークタイムズの記事が紹介されています。
戦争による世界で唯一の被爆国である日本の国民が、
今度はゆっくりした被爆の危険にさらされています。
放射能を浴びることが「被爆」でなく「被曝」である
ことは知っています。
でも、今回のことは、
日本人が日本に原爆を投下したように見えて仕方ありません。
だとすると、「被曝」でなく「被爆」です。

原子力発電

 

地震の影響により、
今月予定されていた書籍の刊行がのきなみ延びそうです。
刊行ラッシュの時期にあたっているわけですが、
印刷所への紙の供給量が減っています。
仕方ありません。
著者の方々には、その旨連絡いたしました。
紙の生産所は、東北に多くあります。

カメラマンの橋本さんは石巻出身です。
橋本さんに聞いたところ、
ご兄弟の安否がまだ分からないそうです。
ご無事を祈ります。

福島の原子力発電所の事故につき、
政府、東京電力、専門家の説明をテレビで見ましたが、
難しい言葉をつかっている割には、
単純至極、簡単な理科実験のようにも見え、
危険と隣り合わせの状態で成り立っているものであることは、
よく分かりました。
言いづらい場面になると、
眼をパチクリさせ、
カタカナをつかうことも分かりました。
解説を聴きながら、
岡倉古志郎の『死の商人』を思い出しました。
原子力発電も同じに思えてきたからです。
「戦争はなぜ起きる?」という疑問に対し、
これほど明快に答えている本をわたしは他に知りません。
岩波新書で出ていましたが、今は絶版になっているようです。
アマゾンのマーケットプレイスで1円で出ていますから、
送料を含めてもお得です。
岡倉古志郎は岡倉天心の孫です。

昨年十月三十一日に、
菅首相とグエン・タン・ズン・ベトナム首相との
首脳会談がで行われ、
ベトナムが計画している原子力発電所の建設で
日本をパートナーとすることが決まりました。
高い安いがあるのかもしれませんが、
一般的には、
一基凡そ三〇〇〇億円ともいわれています。
太陽光発電や風力発電はさらに割高との話もありますが、
今回のことを踏まえ、
代替エネルギーについて、
真剣に考える時期に来ているのではないでしょうか。
電車や電気が止まると困るけれど、
これが普通と考えて、
仕事と個人の生活を洗い直すきっかけにしたいと思います。

東日本大震災

 

被災地の皆様へ、お見舞い申し上げます。

また、お亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げます。

モーツァルト談義

 

 沈丁花香り訪ねて散歩かな

「今ね、電車なんだよ。三十分後にかける」
「了解」
「おう。ごめんごめん。ちょうどいい時に電話もらったよ。
あやうく乗り過ごすところだったから」
「ところでモーツァルト、今も聴いてる?」
「聴いてるよ。電車はストレス溜まるからね」
「昔からモーツァルト好きだったっけ?」
「いや。あのね、ロンドンにいた時さ、
モーツァルトが旅したところを訪ねたことがあったのよ。
かみさんと息子は興味がなかったらしいんだけど、
この頃、そういえばお父さん、
モーツァルトを追って旅したことがあったねー、なんて」
「へー、そうか。おもしろいね。
奥さんも息子さんも当時は興味がなかったわけか」
「そうそう」
「この頃それが話題になると」
「うん」
「ところで、電車の中でなに聴くの?」
「いろいろ。今日はレクイエムを聴こうかなとか」
「え゛え゛え゛。通勤電車でレクイエムはまずいだろ」
「そういう気分の時もあるわけよ。そっちは、なんでまた急に」
「うん。なんとなく。コーヒーのせいかな」
「コーヒー?」
「歳とっても、新しいことに興味が湧いて、
調べたり読んだり聴いたりするのは楽しいね」
「お前んとこのオーディオで聴いたら、また違うだろうなあ」
「聴きに来いよ」
「うん。かみさんと交渉してみる」
「交渉?」
「交渉」
「なんか、商売みたいだな。相談だろ?」
「違うんだなこれが。いろいろあるんだよ」
「だから交渉?」
「そいうこと」
「どっちでもいいけど、遊びに来なよ。モーツァルトに浸かろうぜ」
「いいねえ。連絡するよ」

 香り未だ硬き蕾の沈丁花

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