古典の笑い

 

 塀越しの物言はずあり梅の花

ジャン・ヴァルジャンは縁のあった他人の娘コゼットを
我が子のように、我が母のように、
また恋人のように愛するわけですが、
時を経、コゼットは美しい女性に成長します。
しかし蜜月は永遠ではありません。
マリユスという若い美しい青年が出現し、
ジャン・ヴァルジャンのこころは乱されます。
彼のこころを慮り、ユーゴーは書きます。
「相次いで起こり来る情欲と恋情とは、
冬を経た木の葉や五十歳を過ぎた人によく見らるるとおり、
黒ずんだ緑の上に柔らかな緑を生じさせるものであるが、
彼のうちにはそういう現象を少しも起こさせなかった。」
(岩波文庫第四巻一二六頁)
朝の早い時刻、
まだしんしんと寒い洋間で静かに読んでいたとき、
この箇所に出くわし、
爆笑してしまいました。
冬を経た木の葉や五十歳を過ぎた人によく見らるるとおりって。
しかも、
黒ずんだ緑の上に柔らかな緑を生じさせるっていうんですから、
笑わずにいられません。
おかしいでしょ、そのたとえ!
ウケを狙って書いているわけではないでしょうから、
よけいに可笑しくなります。
ユーゴー先生、笑わしてくれます。

写真は、ひかりちゃん提供。

 小さき子に我ももらへりバレンタイン

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