百円ライター

・水温み愉しきことを待つ日かな

和室に簡易仏壇がありまして、
毎朝水を替え、正座して手を合わせます。
簡易といってもまだ足りないぐらいで、
仏壇でない箱を仏壇とし、
小さな額に入った祖父母の写真を飾り、
仏具屋で買ったこれまた小さな鉦があるのみ。
線香立ては、
施設の生徒が作った手捻りの器をそれとして使い、
近所で拾ってきた土を入れています。
線香は三種類置いてあり、
その日の気分で替えることにしています。
さて、
線香に火を着ける段になり困るのは、
このごろなかなか火が着かないこと。
百円ライターですが、
オイルはまだ残っており、捨てるにはもったいない。
なんとか使い切りたいと思ってカシュッ!カシュッ!
十遍ほど繰り返すと、
親指の腹が擦れて白くなり、痛くもなってきます。
しばらく休み、
ライターを思いっきり振ってみたり、
+と-の目盛りが付いているツマミを移動させたりし、
気持ちを切り替えて、カシュッ!
着くこともあれば、
それでも駄目なこともあり。
そのうちだんだん、
火の着かぬライターを我が身に置き換え、
祖父母に手を合わせることよりも、
ライターの火よ点れと必死になっている自分に気づきます。
歳をとることは、
しょっぱくなることでもあるけれど、
着火しづらくなることでもあるなあと独り感じ入ったり…。
うんうん。
クソッ! どうだ! カシュッ!
着いたー!!
って、この姿を見て、祖父母はなんと思うだろう。

・水温み飴色の下鮠泳ぐ

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