目は読む

 

 春立つやモーツァルトも華やげり

先週、新聞を読んでいたら、
俳人の山口優夢さんについての記事が出ていました。
「優夢」と書いて、ゆうむ。
二十五歳の大学院生で、
第五十六回角川俳句賞を受賞されたそうです。
それを読んでいて、ハッとしました。
時間にして0.1秒もなかったかもしれません。
ほんの一瞬です。

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「恩知らずのすすめ」というふうに勝手に読んでしまい、
あわててそんなことはないだろうと、
わたしが考える前に脳が判断したらしく、
改めてよく見ると、
たしかにそんなことはないのでした。
そりゃそうだよな。
世話になっているのに、恩知らずなんて…。
ああ、ビックリした。

 春眠や妖し妖しのまどろみぬ

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春よ来い!

 

 春立つと一枚脱いでまた着込み

♪ は~るよ 来い
って大声で歌ったら、
ハルという名のおばさんが慌てて走ってきたという
ギャグがありましたが、
それはそれとして、
きのうは節分、今日は立春。
なんだかうきうきします。
「水温む」とか「山笑ふ」とか、
春には好きなうれしい季語がいっぱいあります。
「山笑ふ」なんて、
字を見ているだけで、
山が笑っているようです。

 立春や「北国の春」祖母まろし

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なんだこれ?

 

 ホッカイロ貼って後ろを確認す

まずこれをごらんください。
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って、
小さくて分かりませんね。
これは、ヴィクトル・ユーゴー作『レ・ミゼラブル』
岩波文庫版第3巻448ページです。
朝の楽しみとして読んでいるのですが、
「ん!」と思って、眼を凝らしてよく見てみました。
その箇所を拡大したのがこれです。

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活版印刷の名残りをとどめるものとして、
おもしろく感じました。
こんな小さな文字も、
ちょっと前までは文選工(ぶんせんこう)と呼ばれる職人さんたちが一つ一つ
活字を拾って木の箱に並べていたのかと思うと、
感慨一入(ひとしお)です。

 コーヒーのカップ手挟み暖を取る

これなんだ?

 

 電車内マスクマスクに追い遣られ

すてきな、かわいい友達からメールが届きました。
「これなんだ」
写真が添付されていました。
碁盤に白と黒の碁石が並べられています。
あ! と、ひらめき、
さっそくメールを返信。
間もなく「大正解!」のメール。
よもやま日記で紹介していい? と訊いたら、
どうぞ、ということなので、
今日の写真はそれにします。
さて、
これなんだ?

 どどどどど背面襲ふ人の列

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電子書籍は

 

 日だまりを知りて告げるや蕗の薹

我が社の電子部長オカピが、
『本は、これから』を貸してくれました。
いろんな人が、
これから本がどうなるかについて論じています。
なかでも、
古書店主で作家の出久根達郎(でくね・たつろう)氏
の文章は笑えました。
いわく、
電子書籍を考えた人は本好きではないのだろう。
本が多くて床が抜けるとか、
いつも家人に怒られているとか嘆いていても、
そこにはねじれた喜び(とは出久根さん仰っていませんが)
が潜んでいるのであって、それを忘れてはいけない。
日本人は紙が好きなのだ。
電子書籍のうたい文句に、
「何千冊もの本が読め、本棚が要らなくなる」があるけれど、
本好きは、
本棚に自分の好きな本が並んでいるのを見るだけで、
うれしいのだ…。
出久根さんの論に同調しつつ、
わたしの意見も合わせて書いてみました。
古書店の商売というのは、
特定の本を求めて来る一人を相手にしているので、
その一人がいなくなるとは考えられぬ、
という言葉も納得です。

 雪下ろし雪下ろしして日が暮れぬ

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