電池の時計!?

 

 酷寒を過ごす一日腹が減り

会社を起こす前、
気持ちを奮い立たせるためを口実に、
失業保険でブルガリの腕時計を買いました。
その電池がとうとう切れたらしく、
針が動かなくなりました。
一九九九年に買って一度も電池を交換していませんから、
大したものです。
時間もほとんど狂わず、
正確に時を刻んでくれました。
先だって、時計を買った店へ出向きました。
ビルの上階だったと記憶していたので、
エスカレーターに乗りました。
下りたフロアを横切り、またエスカレーターに乗ります。
ちょうど店員さんがいたので、
声を掛けました。
「電池の時計を交換したいのですが、何階ですか?」
店員は、くすっと笑ったようでした。
「電池交換なら六階です」
「そうですか。ありがとうございます」
十二年間もよくぞ正確に時を刻んだものと、
そんなことを考えていたせいか、
「時計の電池」と言うべきところを
なぜか「電池の時計」と言ってしまいました。
それに店員さんは気づいたのでしょう。
わたしも可笑しくなって、
一人笑いながら、
次のエスカレーターに乗りました。

 くっきりと曇らぬ月の寒々し

100716_1852~00010001