温美さんのこと

 

 みちのくの雪の国より友来り

秋田から温美さんと睦子さんが遊びに来てくれた。
劇団四季の「マンマ・ミーア!」を見がてら、
横浜まで足を伸ばしてくれたのだ。
温美さんとは、小学一年からの同期生。
温美と書いて、はるみ。
わたしが通った小学校は二クラスしかなく、
六年間、温美さんとずっと同じクラスだった。
睦子さんとは、中学一年からの同期生。
中学一年のときは席が隣同士。
彼女はバスケットボール部。
わたしは最初野球部に入ったが、
先輩からバットでケツを殴られたことがきっかけですぐに辞め、
ブラスバンド部に転向した。
温美さんは、秋田市にある病院の事務の仕事を長くしており、
わたしの母は定期的にそこで診てもらっている。
病院嫌いの母は、
温美さんの笑顔のおかげで病院に行けると常々言っている。
昨年、温美さんのお母様が亡くなった。
それからしばらくしてわたしの母は、
薬をもらいに温美さんが勤める病院へ行った。
受付にいた温美さんはわたしの母を見つけ、
席を立って側に来た。
二人寄り添い、待合室から離れた。
母は温美さんに、「大変だったね」と言った。
母はそれしか言えなかったのだろう。
温美さんと母は抱き合って泣いた。
温美さんは、母を見るたび、
自分の母親を見るようだと言う。
わたしの記憶は、小学時代、
参観日に学校にいらした温美さんのお母様の姿に張り付く。
温美さんのお母様とわたしの母の名前は、
ともにレイコで同じである。

 友の眼に五十年を見てゐたり

080101_1524~0001