本を作る

 

 今日からは完全防備のダウンかな

JR横浜線で横浜から八王子まではちょうど一時間かかります。
横浜発9時39分、八王子着10時39分。
いま用意している『先生、いのちのことを教えて』の著者
引地ユリ先生の講演を聞きに行ってきました。
八〇〇人入る会場が超満員!
いのちの誕生という重いテーマなのに、
軽妙な笑いを交えながらの楽しいお話で、
一時間半があっという間でした。
あふれんばかりの声量、メリハリの利いた話術、
とても八〇歳とは思えません。
『先生、いのちのことを教えて』は、
養護教員として三〇年間務められた引地先生の
九死に一生を得た引揚げ体験を綴るものです。
先生のユニークな性教育の根本が、
敗戦による引揚げ体験にあったことを知る本になる予定です。
冷たい雨をくぐって社に戻ると、
中学生たちが本作りに熱中していました。
初日とはちがい、
和気藹々とした雰囲気のなかで、
ときどき笑いもこぼれています。
つい、どんな本が出来つつあるのか、覗いてしまいます。
フランス装のかわいい本が出来上りました。
子どもたちの顔が嬉しさで上気しています。
指導してくれた多聞さん、テラチー君、
お疲れ様でした。

 寒いのに八王子まで一時間

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職場体験学習

 

 霜月や弱きこころに怒りあり

横浜女学院中学が毎年行っている
職場体験学習の時期がやってまいりました。
春風社での受け入れは今年で五回目になります。
二日間で、
「私の好きな本」をテーマに書いた自分の原稿をもとに、
小さな本を作ります。
出版社は本を作ることをなりわいにしていますから、
実際に本作りを体験してもらうことが一番だろうということで、
例年そうしています。
昨日はその初日。
午前中、わたしが講師をつとめ、
そもそも出版社とは何ぞや、
みたいな話をしました。
また、
漱石さんから「吾輩は猫である」の原稿を
今いただいたと仮定し、
平成のわたしならこんな風に直す、
的な話をしたり。
これが正しいという答えはなく、
第一の読者として著者の意図を汲みつつ、
分かりやすさ、
読みやすさを大事にしながらやらなければなりません、
てなことを、
一時間半たっぷり怒涛のごとく話しました。
さて今日はいよいよ本番。
講師は、矢萩多聞さんとテラチーです。

 オーティスの歌に和みし冬の月

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元気のもと

 

 APEC忘れ去られし冬の月

週に二回はドジョウを食べます。
子どもの頃秋田で食べたのは、
同じドジョウでも、
ほかになんにも入れない、
ただ醤油で濃く味付けしただけの煮たドジョウでしたが、
それでも美味しくてよく食べました。
夕方弟と罠を仕掛けに行き、
翌朝早くに取り上げに行くのです。
竹で編んだ罠を持ち上げた瞬間、
ドジョウがウニュウニュと動いて、
どれぐらい獲れたかが重さで分かりました。
家に持って帰り、罠の栓を抜き、
バケツにどさりと黒い塊となって落ちた
ドジョウを見たときの快感は忘れることができません。
イモリが紅い腹をひるがえし、のたくっています。
イモリを取り除き、
適当な量のドジョウを小鍋に入れて煮るのは、
母か祖母の役目です。
押さえた蓋にバチバチとドジョウがぶつかります。
押さえていないと、
どこまで跳ぶか分かりません。
それぐらい力がみなぎっている。
数年前、
怪我と病気で全く食欲が失せた時、
ただドジョウだけは食べたいと思って、
野毛坂をとぼとぼと下り、
福家さんに向かったものでした。
ドジョウは、だから、わたしの元気の源です。

 午前四時寒さしんしん降りにけり

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警官

 

 ひたひたと天への落ち葉つづきをり

昨日は日曜日でしたが、
いそいそと会社に出かけました。
紅葉坂の途中に横断歩道があります。
ここか。
ウチのテラチーが赤信号で渡って警官に注意されたのは。
ふと見ると、
いつもはいない警官が確かにいます。
APECで駆り出された警官に違いありません。
ふむ。
いたずら心がもたげてきました。
と。
信号がタイミング悪く(よく?)青に変りました。
しかたなく、普通に渡りました。

 豚汁や遥か上空荒れにけり

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三五〇点

 

 つやつやと四つに割れし柿の尻

弊社の創業は一九九九年一〇月一日ですから、
現在は十二期目にあたります。
先日、
総務のN田さんが十一期の在庫表を整備してくれ、
それにより数えてみたところ、
この十一年間で
約三五〇点の本を作ってきたことになります。
一冊一冊こころをこめ、
五〇〇点、一〇〇〇点目指し
頑張りますので、
これからも皆様どうぞよろしく。

 秋の日や父のふるさと待ち遠し

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飛翔

 

 夜寒し火照った頭を冷ましけり

きのう、野毛方面へ坂を下りていた時のことです。
下から上ってくる初老の女性が、
手を大きく回して何かを振り払いました。
見れば、茶色いものがはらはらと宙を舞い、
道に落ちましたから、
なんだ枯葉か、と思いました。
風に舞う枯葉を
生き物と勘違いしたのかもしれません。
あんな大げさに振り払わなくても…。
女性とすれ違い、
わたしはどんどん下へ歩いていきました。
すると、
車道に落ちていた茶色い枯葉がバッと飛翔し、
頭上を越えて歩道の横の崖に張り付いたではありませんか。
は~!!
枯葉と思ったのは、大型のバッタでした。
それで、あの女性。
感心して見上げていると、
後から来た男性が
「バッタですか?……珍しいですね」
と言い、
わたしと並んでしばし崖を見上げました。
なんだか、うきうきしてきました。

 ビル群がせせら笑ひし夜寒かな

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洋風おでん

 

 くしゃみしてこんちくしょうと罵れり

保土ヶ谷の国道一号線沿いに、
ビストロ・グランブルーがあります。
マスターはわたしの飲み友達でもある渡辺さん。
苦労人で、
料理人としてながく腕をみがき、
昨年、満を持して自分の店をオープンさせました。
流行っています。
仕事柄、外国の料理を食することの多い
高校時代の友人を案内したところ、
こんな美味しいイタリア料理は初めてと、
感激していました。
先月一人で食べに行ったとき、
なにげなく、
寒くなってきたから、
ナベちゃん洋風おでんでもやってよと話したら、
むむ、いいかもしれない、
てことになりました。
一週間ほど経ったこのあいだの日曜日、
渡辺さんからメールが届きました。
「洋風おでんを始めましたのでどうぞ」
さっそく家人と出かけ、味を楽しんできました。
ほかのお客さんもメニューを見、
へー、洋風おでんか、
わたしにも一つ、
なんて所望し、
なんだかこっちまでうれしくなりました。
おでんもそうですが、
渡辺さんの心を込めた料理、
どれも美味しいですよ。
国道一号線沿い、
JR保土ヶ谷駅東口から徒歩2分のところにあります。

 柿の句の解説なせし恩師かな

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