印泥

 

 薄原銀河鉄道走りけり

ときどき、肩から首、
頭まで痛くなることがあります。
毎朝欠かさずに気功をやっているのに、
どうしたわけだろうと不思議に思っていました。
昨日、仕事が終って帰宅するとき痛みがありました。
今朝もまだ残っています。
仕事が詰まっていて、
一日忙しかったからなあと思っていました。
それはそうなのですが、
はたと思い当たりました。
捺印(なついん)です。
かなりな数の書類にハンコを捺(お)しました。
わたしは、
ふつうに売っている水分を多く含む朱肉が嫌いで、
中国原産の印泥(いんでい)をつかって捺印します。
これだと印鑑の文字が滲まずシャキーン!と出ます。
美しくすら感じます。
ところが一つ問題がありまして、
相当力が要ります。
顔が赤くなります。赤鬼。
捺印の必要な書類は営業部担当のものが多いのですが、
力と経験が要るので、
必然、その役はわたしに回ってきます。
昨日は、二十六枚の書類に捺印しました。
角印と会社実印の丸印。
したがって五十二回、顔を真っ赤にして、
指に印鑑の痕がのこるくらい力を入れました。
その結果、
肩から首、頭の痛みとなって現れたようなのです。
原因が分かった分、スッキリしました。
痛みはまだありますけど。
今日は気功の日ですし、
ゆっくり解きほぐそうと思います。

 風吹けば又三郎の秋となり

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多聞展

 

 手を広げおいでおいでの薄かな

春風社のアートディレクターともいうべき
矢萩多聞さんの個展が久しぶりに東京でひらかれます。
わたしが多聞さんに初めて会ったのは、
髪が腰まであった多聞さん十九歳、
春風社の設立に向け準備をしている頃でした。
二十歳の記念の意味をこめ作ったのが、
『インド丸ごと多聞典』です。
これが彼にとって初めての装丁の本でもあります。
あれから十一年。
今は、装丁家として押しも押されぬ人になりましたが、
核にあるのが画業のはずです。
いま彼がどんな地平に立っているのか、
興味の尽きないところです。
春風社の装丁のエッセンスは、
多聞さんの絵にあるといっても過言ではありません。
興味のある方は、ぜひお運びください。
10月14日(木)から19日(火)まで、東京都文京区の谷根千〈記憶の蔵〉
詳しくはリンク先をご覧ください。ここ

 たおやかに闇に浮びし薄かな

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収穫期

 

 稲刈りの父の姿の頼もしき

わたしが編集した本が昨日、二冊同時にできてきました。
『実感から関係化へ ある重度重複障害者と関わって』
『新版 教師養成教育の探究』
上は、
ある重度重複障害者と二十年にわたって関わり、
その過程で見えてきたこと、
学んだことを謙虚に静かに記しています。
人と関わるとはどういうことか、
そのことを真摯に問いかけた本です。
下は、
三十年以上前に出た本の新版です。
引用されることの多い本ですが、
手に入りにくくなっていました。
最初出版された当時、
非常に批判され、
ひどい場合は非難されもしたそうです。
批判や非難の要点は、
戦前の師範学校教育に戻すつもりか、というものでした。
教師というのは、養成しなくても、
学問をすれば自然と立派な教師はできる、
という信仰に近い反省があったのかもしれません。
ところが現在どうでしょう。
教育の荒廃が叫ばれ、
学校に未来はないとまで言われる時代です。
時代がこの本に追いついた
といっても過言ではありません。
この本には、
学問と実践のせめぎ合いの中で、
なんとしてでも子どものたましいの世話をする
プロの教師を養成するのだという気迫
みたいなものが感じられます。
若き日の著者みずから、
大学に籍を置きながらそこに安住せず、
さまざまに自己を鍛錬しているその姿に
感動すら覚えます。
新書のようにサッとは読めないかもしれませんが、
どちらも、ゆっくり、
じっくり読んでほしい本です。

 連山の下点となりて稲を刈る

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子ども時代を描いた傑作マンガ

 

 小便の切れてしぶくや秋の風

子どもの時って、
どうしてあんなことをしたんだろうなあということを
正しく思い出させてくれる本に出合いました。
『とうとうロボが来た!』。マンガです。
可笑しすぎて、何度も声を出して笑い、
家人に気持ち悪がられています。
たとえば、こんなの。
主人公が鼻の穴に人差し指を突っ込み、
グリグリしながら同級生に声を掛けます。
「おい、シバタァ。」
振り向いた柴田くんは、いやな予感がします。
主人公は相変わらずニヤニヤしながら、
鼻の穴に入れた人差し指をグリグリしています。
と、
いきなり、主人公が、
「プレゼントやる!」と言って、
鼻の穴から指を抜き、
柴田くんの顔にくっつけます。
「わっ、キタネ!!」と柴田くん。
すると主人公「バーカ、いま中指でやったんだよ。」
見れば確かに、
ハナクソは人差し指に残っています。
柴田くん「クダラネーことすんなよ!!」
言葉で説明すると少し長くなりますが、
四コママンガですから、テンポよく、
笑えます。
これを昨日、
家人にやって、マジで怒られました。
「いい歳して、なにやってるの!!」
尾篭な話だけでなく、
兄弟、家族、友だちとのエピソードが
コミカルに豊かに描かれていて、
傑作だと思います。
笑いすぎて、やがて哀しきマンガです。
教えてくれた愛ちゃん、ありがとうございました。

 ふるさとの逆さに落ちし秋の風

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盆栽の本

 

 なかなかに人に知られず秋の風

盆栽の本の打ち合わせのために川崎仁実さん来社。
今回も、
鉢植えと盆栽はちがうこと、
明治に入りヨーロッパから輸入された芸術の概念により、
進化発展を遂げる日本の盆栽は
芸術とはみなされなかったことなど、
目からうろこの面白い話をうかがうことができました。
川崎さんは、
高校生のときに盆栽展を見に行き、
そこでスカウトされ盆栽雑誌のモデルとなり、
以後、盆栽美術家として研鑽を積まれた方です。
彼女の盆栽の本が出れば、
『茶の本』がそうであるように、
おそらく日本の文化と伝統を江湖に知らしめる
標準の教科書になると思われます。
お楽しみに!
さて今日は、
これから電車で千葉県・横芝へ向かいます。
『九十九里浜』の写真家・小関与四郎さんと、
次の写真集の打ち合わせです。

 秋の雨足を濡らして過ごしけり

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