引揚げ

 

 秋澄むや伽藍の空に烏鳴く

引地ユリさんをインタビューしてきました。
引地さんは、
1929年樺太(今のサハリン)に生まれました。
かの地で敗戦を迎え、
危ない目に遭いながらもなんとか日本に帰り着き、
看護婦の資格を得ました。
その後、横浜市立保土ヶ谷中学校を皮切りに
中学校の養護教諭として、
三十三年間勤め上げた人です。
引地さんの実践は1986年に
『かげぼうしのつぶやき』として出版されましたが、
今も多くの人に読みつがれています。
とくに彼女の性教育には定評があり、
生徒だけでなく、
父母や教師から熱烈な支持を受け、
八十歳を超えた現在も講演行脚に全国を飛び回っています。
今回ウチが出版するのは、
ユニークな“引地教育”に至る根を形成したと思われる
敗戦から引揚げの体験をまとめる本です。
引地さんの生徒とのかかわりの根本が、
人間の醜さと尊さを体得した引揚げ体験にあったことが、
インタビューを通じて明らかになったと思います。
『先生、いのちのことを教えて 引揚げから養護教諭へ』
といった中身になるはずです。

 岩手山ひかりの粒の秋澄めり

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