鰻丼

 

 りんごジュース息をつかずに飲む子かな

暑いので、
昼、一人いそいそと鰻丼を食べに行きました。
創業六十年の老舗・清泉(きよいずみ)さんへ。
近くにJRAがあり、
日曜日は競馬ファンで賑わいますから、
レースを観るための大型テレビが設置されています。
平日は、ドラマやニュースを映しています。
きのうは、高校野球の実況中継でした。
東海大相模対九州学院。
数名いた客が、いっしょに試合を観戦します。
短いコメントを挟む人もいます。
ほどなく、鰻丼が出てきました。
山椒をたっぷり振り掛けます。
一口。
二口。
旨い!
箸を休め、
しばらく試合に没頭。
打球が九州学院のピッチャーを強襲し、
手首に当たって痛そうです。
それから、漬物をぽりぽり噛んで、
鰻をまた一口。
解説者が何か言っています。
よく聞き取れません。
ビール瓶をそばに置き、
鰻重を食べていた二人連れの客が先に立って、
店を出て行きました。

 夏休み残り数える子らの顔

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同期会

 

 艶々とこの白桃の白さかな

五年ごとに行っているという高校の同期会に
友達といっしょに初めて参加しましたが、
そのとき撮ってくれた写真を、
ある方がメールで送ってくれました。
四次会まで行ったと、文章が添えられていました。
涼しくなったら、
きりたんぽ鍋で一杯やりましょう、とも。
楽しみです。
旧知の友と酒を飲むことを、
漢文で習ったときには、
そんなものかとながめただけでしたが、
だんだんとその味を、
頭でなく、腸(はらわた)で感じるようになっています。
その年齢になったということでしょう。
陸上部でいっしょに汗を流した仲間の一人が、
すでに鬼籍に入ったことを知り、
今さらながら、
人生の儚さにショックを受けました。
まさに、人の夢です。

 葡萄剥く皮の残りし堅さかな

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胃からおっさん!?

 

 吐き気して胃酸おっさん酷暑かな

家人の妹が娘二人を連れて遊びに来ています。
サキちゃんは小学二年生。
ユウちゃんは幼稚園の年中さん。
きのうのことです。
わたしは会社を退けてから、合流しました。
二人のママは熱にやられたのか、
トイレで吐いてしまいました。
しかし、かえってそれが良かったのか、
その後は元気に中華街でいっしょに食事をしました。
きけば、いつの間にか頭の痛みも取れていたとか。
道々、家人が、
「おなかが空いて胃酸が出たんじゃないの?」
と訊くと、
それを耳ざとく聞いていたユウちゃんが、
「おっさんが出てきたの?」
一同爆笑!
なんとも楽しい子どもたちです。

 近寄りて持つその手からアブラゼミ

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てんこ盛り

 

 蚊か蚤か百足虫が刺したか中てられる

午前三時過ぎ。
首筋の辺りがなにやらむず痒くなり、
何度も手をやってみるのですが、
なにも指に触りません。
しばらくすると、
今度は脇の下が痒くなり、
と思いきや、チクリとしました。
間違いない!
百足虫だー!!!!!
ガバと跳ね起き、
灯りを点けました。
Tシャツを脱ぎ、裏返し、
ワッサワッサと、はたいたら、
黒い糸くず大の小さな百足虫がシーツの上をのたうっています。
ティッシュで捕まえ、潰しました。
子どもの頃は、田舎のことですから、
よく蚤に刺されました。
虫によって、刺されたときの感覚がそれぞれ違います。
目隠しした状態で刺されたとして、
わたしは、それが何の虫か中てることができます。たぶん。
そこで今日の句になったわけですが、
蚊も蚤も百足虫も夏の季語で、
季語てんこ盛りのルール違反なのですが、
宗匠についているわけでなし、
いいことにします。

 汗掻ひて蟻走感の百足虫かな

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番楽を観る

 

 雨の中を慌て飛びゆく鬼ヤンマ

写真家の橋本照嵩さんと秋田へ行くことになり、
それはとても楽しみなのですが、
急のことなので、
新幹線のチケットが取れるか心配しました。
が、
運よくチケットが取れ(!)、
「こまち1号」で一路秋田へ向かいました。
一日置いて13日、
能代市二ツ井町飛根(富根)の愛宕神社境内は、
台風一過、
大きな欅の木々から木漏れ陽が降り注いでいました。
午前中は、子どもたちの舞。
昼は演者、スタッフ、観客合同の「きりたんぽ」食事会。
午後からは、いよいよ大人たちによる舞です。
手の返し、指の表情、腰のシナに、
何百年と伝承されてきた
言葉以上の喜びと祈りが籠められているようです。
それが観るものに伝わってきます。
橋本さんは、コマのように動き回り、
汗だくになって、
カメラのシャッターを切っています。
最初、ぽつぽつと寂しかった客席が、
いつの間にかいっぱいになり、
最後の「山ノ神舞」が終ると、拍手喝采が沸き起こりました。
本来は九月に行われたということで、
豊作を感謝し、
一年の労をねぎらうことの意味を知る一日になりました。

 墓参り破れて滑る時空かな

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番楽を撮る

 

 雲の端や暦追いかけ秋立ちぬ

神田明神本殿で披露された秋田県富根の
番楽について、
先日ここに書きましたが、
昨日来社した写真家の橋本照嵩さんに話したところ、
大いに感じるところがあったらしく、
このお盆休みを利用して、
いっしょに秋田へ行くことになりました。
とはいうものの、
秋田新幹線は、全席指定。
帰省ラッシュということもあり、
今頃切符がとれるかが心配。
指定が取れなくても、
乗れさえすれば、
交替で座っていけるのですが、
さて、どうなりますことやら。

 番楽や仮面の裏の四百年

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 本を閉じすることもなし団扇かな

このごろ隔週で鍼灸院へ行っています。
どこというわけでなく、
全体を診てもらい、
体の表、裏、左右に鍼を打ってもらいます。
「お酒を控えていますか?」
「今週は、砂糖を少し摂りすぎましたね」と、
先生は何でもお見通しです。
一時間たっぷり診てもらい、
次の予約を入れ、
電車で帰ってくるのですが、
施療してもらった日は、
鍼の効果がどんなものか実感することはありません。
ところが、一晩眠って朝起きると、
違います。
ドーンとだるく、体が重い。
てきぱき動くことが嫌になります。
ところがところが、
さらに一晩眠ると、なんでか分かりませんが、
脱皮でもしたようにサッパリしています。
気づかぬうちに溜まった疲れが落ちたような気がします。
人の体の不思議を感じます。

 秋立つや雲を見遣りて風を聴く

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