読書三昧

 

 紫陽花や飯の炊けたる匂ひせり

まず一冊目は、バルザック『従姉ベット』。
『ゴリオ爺さん』『幻滅』『浮かれ女盛衰記』と
読んできての四作目。
こころの美しい人は死ぬまで美しく、
底意地の悪い人間はまた死ぬまで底意地悪いという、
まさに「人間喜劇」であるなと納得。
きのうから『従兄ポンス』に突入!
二冊目は、小林信彦『小説世界のロビンソン』。
これは、以前面白く読んだ本ですが、
古本屋に売ってしまい手元になく、
ネットで検索したら1円で(!)出ていましたので、
すぐに注文し入手したもの。
一気に読了。
この人の小説のとらえ方は共感するところが多く、
また、引き合いに出される作品の好みも似ていて、
そうなるともう、本を擱く能はずで、
気が付けば最後のページ。
本についての本としては、相当好きなのに、
なんで売り払ってしまったのか、
自分でも不思議。
三冊目は、佐々木幹郎『旅に溺れる』。
いろいろな媒体に発表してきたものを
一冊にまとめたエッセイ集で、
春風社関係は、
「春風倶楽部」から二点、
山本真弓『牡牛と信号――〈物語〉としてのネパール
から一点(同著の序文)収録されています。
書名も、
「春風倶楽部」にご寄稿いただいたエッセイと同じですから、
一段と親しみが湧き、うれしく思いました。
『小説世界のロビンソン』とはちがった意味で、
ぐいぐい読まされ、特に、
双子の弟さんが沖縄で倒れ、
すぐに飛行機で駆けつけ見舞ったときのお話「17ccの血」
の中の、
「わたしはそのとき、一瞬にして覚悟したのだった。
彼がこのままの麻痺の身体でいることを神が望むなら、
わたしはその半身になってやろう、と。」
の文章は、弟さんを思うこころが伝わってきて、
涙なしには読めませんでした。
以上、本と旅した二日間でした。

 天仰ぎクワガタ六脚うごめかす

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