いい本は売れない!?

 

 衣更へしてハンカチ忘れをり

本の業界では、
「いい本は売れない」ということが
まことしやかに言われてきました。
売れなくても、いい本をつくっているんだぞという、
自己満足と慰めの意味もあるのかもしれません。
きのう、ある大学の先生から電話がありました。
国立大学の学長をされた方で、
今は、私立の大学で教鞭をとっておられます。
先生とは、もう三十年来のつきあいになります。
「最近はどうですか?」と先生、おっしゃるから、
「今年は、電子書籍のことで大賑わいですが、
ウチとはあまり関係ないみたいです。
いまにきっと飽きて、
紙の本にみんな戻ってくるような気がします」と
申し上げたら、
先生「わたしも全く同感です」。
先生と話すのは楽しいので、
わたしは調子に乗り、
「いい本は売れないと、
業界ではジンクスのように言われてきましたが、
売れる売れないの境界の冊数がいかほどか
分かりませんけれど、
十一年会社をやってきて、
体験的に言えるのは、
いい本はドバッとは売れないけれども、
ポツリポツリと途切れずに
売れていくものだということです」と申し上げました。
する先生、間髪入れずに、
「そうだろうな。
三浦君の会社が潰れずにいるんだから」。
ここでわたくし、呵呵大笑。
先生も電話の向こうできっと微笑んでおられたことでしょう。
以前、先生に向かって、
「先生は口が悪いなあ」と申し上げたら、
「そんなことはないよ」と否定されました。
わたしは、「本当のことを言う人を、
世間では口が悪いというみたいですよ」と
食い下がりました。
すると、先生、「なるほど」。
今、先生の本を編集しています。
ポツリポツリと売れていく本になるでしょう。

 水三杯飲んでそろそろ梅雨となり

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