秋田の魅力

 

 スポフェスにエビチリ持参の五月かな

日本を代表する写真家で、
1974年5月31日に亡くなった木村伊兵衛は、
1952年6月から1971年2月までの20年間に、
通算21回、秋田を訪れたそうです。
最初はそんなに足しげく通うつもりはなかったと、
何かに書いてあったのを、どこかで読んだ気がします。
また、わたしの友人で、
現在ヨーロッパで活躍している音楽家のSATOSHI REIさんは、
宝塚出身ですが、学生時代多いときは、
年に七、八回も秋田を訪れたと聞いています。
REIさんに、かつて、
「秋田のどこが、そんなにいいの?
特に何があるわけではないでしょう?」と訊いたことがありました。
その時REIさんの言った言葉が忘れられません。
「何もないところがいい」
わたしの質問に困ったのかもしれません。
REIさんが秋田の印象からインスピレーションを得てつくった
曲に「水の向こうに」があります。傑作です。
聴くたびに、なんというか、血が騒ぎます。
もちろん秋田には、
観光地だって、美味しい食べ物だって、人情だって、
自慢できるものが、いろいろあります。
わがふるさと井川町には、「自慢こハウス」という
土地の産物の直売所もあります。
人とおカネを引き寄せるためには、
みんなで知恵を出し合い、方策を考えなければなりませんが、
「あるものの魅力」の根底に、
「ないものの魅力」が横たわっているような気がします。
そういうことを感じ、考えたのは、
今年のゴールデンウィークに、
横浜で親しくしているご家族の車に乗せてもらい、
秋田に行ったことがきっかけでした。
小3と中1の女子は、
奥山の谷から湧き出る清水を手で掬って飲み、
山菜を採りに山へ入り、
川でアブラハヤを釣り、
鶏小屋で卵をとり、それはそれは楽しそうでした。
秋田に住みたいとも言い、別れ際に涙ぐむ子どもの姿に、
涙もろいわたしの父は、もらい泣きをしていました。
印象的だったのは、
子どもたちが、家の周りをぐるぐる散歩し、
小高い丘から朝靄にけむる奥の山々をジッと眺めていた姿。
木村伊兵衛や、友人のREIさんを惹きつけた秋田の秘密を、
垣間見た気がしました。
軽々に言うことは控えなければなりませんが、
芸術家と子どもの魂を震わせるものが、
秋田にはありそうです。

 スポフェスやデジカメ多し子等よりも

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