謎解き「秋田蘭画」

 

 春風に脚をさらわる寒風山

神田かるちゃー倶楽部・明神塾
「江戸のミステリー 源内・直武―江戸・秋田」の二回目は、
秋田県立近代美術館の山本丈志さんを招いての講義
「直武と秋田蘭画」及び塾長・田中優子さんとの対談でした。
忘れられた絵師であった直武が明治二十年代に、
秋田の画家・平福百穂(ひらふく ひゃくすい)によって
再び世に知られるようになったこと、
そして何より、
直武の絵に隠された謎解きの一時間で、
眠くもならず、
わくわくしながら聞き入りました。
直武が全国区になったきっかけは、
平賀源内が銅山開発指導のために秋田を訪れたこと
(その時、源内が直武の画才を認める)ですが、
講師の山本さんは、
源内が訪れた阿仁の生まれとのこと。
山本さんは調べているうちに、
源内が当時歩いていたであろう土地で
自分が子ども時代を送ったことを知ったそうです。
また山本さんは、
秋田大学教育学部を卒業されていますが、
秋田蘭画を知るそもそものきっかけになったのは、
大学で武塙先生からスライドをみせられたことだったとか。
山本さんは、武塙先生としか仰いませんでしたが、
武塙先生とは、おそらく、
井川町出身の先達・武塙祐吉(三山)のご子息
武塙林太郎氏に間違いないでしょう。
自分の人生で何をするのか、
見えない糸が織り成され、
そのなかで生かされていることを
山本さんの話を聞きながら感じさせられました。

 入道崎海の時間の停まりをり

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ガス漏れ!?

 

 首筋のハンカチあてる五月かな

きのうのことです。
大量に作ったカレーに
トマトを投入してみようと思い立ち、
散歩がてら、いそいそと外へ出てみました。
気持ちのいい季節になりました。
石の階段をゆっくり下りてゆきましたら、
八百屋のおばちゃんがお客さんと立ち話をしています。
おばちゃんとは、
ほとんど毎日あいさつを交わすのですが、
買い物をしたいときに
開いていることが少ないこともあって、
めったに買いません。
今日はいいチャンスです。
「トマト、ありますか?」
「あるよ。Sサイズだけど…」
おばちゃんは、山形県出身の方で、
齢七十をとっくに過ぎていると思われますが、
とても元気で、一人で八百屋を切り盛りしています。
「ウチのは割高だけど、美味しいからと言って、
みんな買ってってくれるんだよ。
えらいねー。あんた、自分でつくるんかね。
ところで、千成さんへは…」などと、
話好きのおばちゃんがゆっくり話していたとき、
不意におばちゃんの話が止まりました。
そしておばちゃんは、言いました。
「聞いたかい? 今のガス漏れみたいな音」
「ええ」
確かに。プシュー、プシューと、
妙な破裂音がしました。
「あの人、歩きながらオナラをしたんだね」
「そのようですね」
見れば、中年の男性が、トレーナーを脱いで首に巻きつけ、
ゆっくり大股で歩いてゆきます。
「面白いね」
「ええ」
おばちゃんの話は悠揚たるものがあり、
なんだか堂々としています。
わたしはうれしくなり、
トマト五個を買って、また石の階段を上りました。

 菜の花や寒風山のふもとまで

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とぐろを巻いたヘビ

 

 たけなわの春を賑はすアブラハヤ

ひかりなのママが言いました。
とぐろを巻いたヘビの頭はどこにあるの?
むむ…!?
いい質問です。(汗)
子どもの頃からしょっちゅうヘビを見てきましたが、
あらためて訊かれると、
即答できません。
イメージ的には、
ズボンのベルトを巻いてたたむとき、
バックルを中心に巻いていきますが、
それと同様に、
ヘビ君も、
自分の頭をバックルに見立てて、
頭を中心に置いて、
渦巻状に巻いていくような気がします。
グーグルの画像検索で見ても、
そういう形が多いようです。
でも、必ずしもそうとばかりは言えないような、
乱れたとぐろもあります。
ところで、
「とぐろを巻く」のとぐろですが、
なんでヘビがくるくるっと巻かれた状態をとぐろと言うのか、
そもそも、とぐろって何なのか、
調べ始めるときりがありません。

 眼の裏の菜の花畑入日かな

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山の幸

 

 母も這ひアイコを採りしこぞの春

この連休を一年前から楽しみにしていまして、
楽しいことは、アッという間に終ってしまい、
横浜に帰ってきた昨日は一日、呆けておりました。
近所のひかりちゃん、りなちゃんたちと
ふるさと秋田を訪ね、
山菜を採り、アブラハヤを釣り、ニワトリと遊び、
山の空気を吸い、清水で喉をうるおすなど、
山の幸を堪能する忘れられない数日となりました。
とくにこの時期の山や田は、
朝靄のなかで光り輝いています。
「魂」という字は、精神論的につかわれると
あまり好きではありませんが、
ふるさとの自然には、
心と言っても足りなくて、
「魂」としか言えない、
なにか心を震わすものがあるような気がします。
わたしの実家から数十メートル離れたところの
Sさんが今年亡くなり、
そこの家にはだれも人がいなくなりましたが、
ほかで奥さんや子どもたちと暮らしている息子さんが、
だれもいなくなった家をちょくちょく訪ねてきては、
畑仕事にいそしんでいるということを、
母から聞きました。
息子さんの気持ちが分かるような気がします。
帰るたびに言葉以上のものを教えてくれるふるさとに、
感謝せずにはいられません。

 蛇つまみぐるんと回す父の春

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