正紀叔父の笑い

 

 生き仏ら騒ぎ師の声天高し

いきなりですが、わたしの父の名は進。一字です。
すぐ下の弟、わたしにとっては叔父、の名は勤。
これも一字。
わたしが衛で、弟は覚。従兄弟たちも、
隆、力、誠、治、透、正、健、亙、などなど、
一字の名前が多い。
そのように、一字の名前が多い一族なのですが、
まれに二文字の名前の人がいまして、
正紀叔父はそのうちの貴重な一人。
その正紀叔父、先日、朝三時ごろ、
布団の中で突如大声で笑い出した。
驚いたのは、隣で寝ていたおばさん。
「なした? なした?」
「なした」は秋田方言で、「どうした」の意味。
訊けば、正紀叔父、拙著『出版は風まかせ』の
「著作権」の章を読んでいて吹き出したのだとか。
「ああ、衛も都会に出て、いろんな人に揉まれ、
ずいぶん苦労したのだなぁ、あははははは…」
という訳なのでした。
その話を、わたしは母から電話で聞きました。
おばさんがわたしの母に会ったときに、
そのことを告げたのだそうです。
それにしても、と思いました。
正紀叔父の笑いの質は、
たしかに我が一族に共通するものである、
と妙に腑に落ちた次第。
ちなみに、正紀叔父は夜通し読んでいたわけではなく、
朝目が覚め、眠れなくなり、
そうだ、衛の本でも読むか、となったようです。

 秋うらら美智也の声の夢千里

200909301723