椅子と辞書

 精神の残尿感か秋の宵

税理士の先生から経費を少し使ってもいいと
お許しが出ましたので、これ幸いに、
ノルウェーはホーグ社製のバランスチェア七脚と
小学館の『日本国語大辞典』(第二版)全十四巻を
会社用に買いました。
『日本国語大辞典』は日本のOEDとも称されるもので、
辞書好きのわたしとしては、前から気になっていました。
新品だと二十二万円もするところ、
「日本の古本屋」サイトで検索したら、
箱無しの揃いで十一万円というのが出ていましたから、
さっそく注文。一昨日、それが届きました。
適当にページを開いて、
細かい文字に焦点を定め読み始めると、
へぇ、そうなんだぁと、知らないことがつぎつぎ現われ、
発見の喜びに浸ることができます。
椅子も辞書も、出版社にとっては重要なインフラです。
昨日、「サイドビジネスとして塾経営に興味はありませんか」
という営業の電話が掛かってきました。
「本業以外に興味はありません」と、すぐに断りました。
塾をサイドの仕事として考えるということが、
そもそも気に入りません。

 鰯雲我れもものをおもふなり

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陽水さんの涙

 どこまでも滑り落ちそな秋の宵

NHKでの四夜連続『LIFE 井上陽水 40年を語る』のうち、
初回の放送を見逃し、見たいと思っていたら、
さいわい武家屋敷が録っていましたので、
借りてさっそく見ました。
せっかくなので、初回分だけでなく、改めて全部を、
といっても一度には無理ですので、三回に分けて。
いろんなエピソードがあって面白かったのですが、
粒ぞろいの代表曲を聴きながら、
ふと、陽水さんの歌というのは、
時は二度と戻らない、そのときどきの風景も感動も
どうしようもなく一回だけのものなんだよ、
ということを、繰り返し繰り返し歌っているような気がしました。
「心もよう」「人生が二度あれば」「ジェラシー」「青空、ひとりきり」
「いつのまにか少女は」「なぜか上海」「少年時代」…
思いつくまま並べましたが、どの歌も
時間の不可逆性が底にながれているように思います。
番組の中で、誰かが言っていました。
陽水さんのサングラスは、涙を隠すためのものではないかと。
ある時ある場所でのライブ映像が映し出されましたが、
「人生が二度あれば」を熱唱する陽水さんの頬には、
確かに汗とは別の液体がこぼれているようでした。
三回目の放送は、故郷が一緒のリリー・フランキーさん
との対談をベースにしたものでしたが、
その中で、陽水さんがこんなエピソードを語っていました。
ライブが終わって、スタッフ数名と飲みに行ったとき、
一人一人に女の子が付くようなお店で、
店の女の子が、陽水さんを指差し「あ! あ! あ!」と言ったそうです。
陽水さんは、自分が井上陽水であることを気付かれたかと勘違いし、
「ま、ま、ま」と両手で制したそうです。
すると、その女の子が、さらに陽水さんを指差し、
「あなた、ゲイでしょ!」
そのエピソードを紹介しながら、陽水さん、げらげら笑っていました。
リリーさんも愉快そうに笑っています。
陽水さんがますます好きになりました。

 新涼やバルタン星人襲来す

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今日の夢

 野分行き人も空も虚の気あり

高校の修学旅行のようでした。
グループごとに部屋に分かれ、荷物を片付けたり、
のんびりテレビを見たりしています。
わたしの部屋は、品川庄司の庄司智春さんと
暴力的なA君とわたしの三人です。
庄司智春さんは、修学旅行だというのに、
パトリシア・ル・コント監督の古い映画のDVDを持参しており、
それを三人で観ることになりました。
庄司智春さんは、その映画に関して調べたメモを数枚持っています。
よほどル・コント監督が好きなのでしょう。
いつもそんな風に下調べをしてから観るの?
とわたしが尋ねると、そうだと言います。
テレビで見る庄司智春さんとは少し違っています。
そのことを、わたしは知っているようです。
わたしは、いまの隙に、部屋を逃げ出そうと思いました。
わたしは、暴力的なA君が嫌いです。大嫌いです。
「ちょっとトイレまで」と言って立ち上がり部屋を出たのですが、
上がり框で振り返ると、A君がじっとわたしを見ています。
かまわずに、わたしは自分の履いてきた靴を探しました。
ところが何度見返しても、靴はどこにもありません。
A君が隠したのだと直感しました。
わたしは、やぶれかぶれな気持ちになり、
裸足で外へ飛び出しました。
そこまでやるとはA君は思っていなかったでしょう。
ほかのグループの人たちが町へ出て買い物をしたりしています。
ある生徒と宿の女将さんが会話をしているのが聞こえてきました。
その生徒は、卒業したら軍人になりたいと言っています。
女将さんはそれに応えて、立派な軍人さんになりなさいね、
と言いました。
わたしは、同期生でありながら、
立派な考えを持っている人だと感心しました。
それに引き換えわたしはといえば、
裸足で外へ飛び出したりなんかして、
行く先も分からず、きっとうまい就職先も見つけられずじまいに
なるような気がして、気が滅入りました。
それでも、庄司智春さんとA君のいる部屋には
二度と戻らないと心に決めました。

 台風過電気仕掛けの空青し

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アレキサンドリアの葡萄

 新涼やなにかいいことありそうな

知的障害児のためのラーニング・ボックス学習法
母の愛が奇跡を生む』を世に送り出した
よこはま児童文化研究所の原先生から葡萄をいただきました。
「マスカット・オブ・アレキサンドリア」というのだそうです。
エジプトのアレキサンドリア港から世界に広まったので、
この名が付いているのだとか。
日本でマスカットと呼ぶのは、
マスカット・オブ・アレキサンドリアのことなんですね。
長いので、オブ・アレキサンドリアを取ったのでしょうか。
送っていただいたこのマスカット、いや、
マスカット・オブ・アレキサンドリアですが、
種無しで皮ごと食べられます。
説明書に、そう書いてありました。
種をいちいち取り除く手間がなく、
皮を剥く手間もいらないとなると、
なんぼでも、ほいほい食べられます。
見る間に減っていき、枝が現われました。
このマスカット、日本では9割以上が岡山で生産されているそうです。
知りませんでした。

 新涼や恋の手紙を書かまほし

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