スズメとハマグリ

 し残した仕事ばかりが秋の宵

坪内稔典さんの『季語集』を読んでいたら、
面白い季語について書いてありました。
「雀(すずめ)海に入りて蛤(はまぐり)となる」
十六字もあります。
俳句は五・七・五で十七字ですから
残り一字しかありません。無理!
なので、ふつうは、「雀蛤になる」と縮めて用いるのだとか。
言われてみれば、スズメとハマグリって色や形がなんとなく
似ている気がします。
子どもの頃、一番下の叔父さんが空気銃で撃ち落した雀を
祖父のトモジイが焼き鳥にしてよく食べさせてくれました。
こんな美味しいもの世の中にあるかと、ばくばく食べたものです。
数年前、叔母さんから聞いたのですが、トモジイは、
美味しい胸肉の辺りは孫の私や弟にくれ、
頭とか足なんかのどうでもいいような部位を
自分の子にあげたというのです。
孫にはかなわないと、叔母さん、ちょっぴり哀しかったそうです。
村上鬼城の句に「蛤に雀の斑(ふ)あり哀れかな」があります。
あんな美味しい雀は食えなくなったけど、
その代わりといってはなんですが、わたしは、
焼き蛤も大好きです。炭火で炙った蛤がパカッと開いたら、
醤油をちょっと垂らします。
えもいわれぬいい香りが立ちのぼってきます。
わたしの場合、風流よりも食い気です。
焼き蛤(はま)に雀の味を思い出し、てか。

 野分の日口をへの字の候補人

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