並ばせるおばさん

 浅漬けの胡瓜娘の匂ひせり
JR横浜駅京浜東北線のホームに時々出没します。
大柄のチェックのジャケットを羽織り、下はズボン、
メガネはかつてのフィンガーファイブを髣髴とさせる
顔からはみ出さんばかりの大きな
半分だけ色付きのサングラス。
姿勢は、妙にピッと立っている。
このおばさん、京浜東北線下りのホームにいて、
整列していない人を見つけると、
いきなり、大声で、
「おまえ、なんで並ばないか! みんな、ちゃんと並んでいるだろ! ちゃんと並びなさい。なにをっ! 反抗してくるか! おまえみたいな奴は初めてだ! これからどこへ行く! 言いなさい! 言いなさいって言ってんだろ! さあ言え! 言いやがれ!……」
おばさんに目をつけられた人は、
途中から完全に無視するか、
駅員に事情を話して助けてもらおうとします。
そうすると、並ばせるおばさんは、
それはもういきり立って、
尻から血が出るほど叫びまくります。
その人が電車に乗ってドアが閉まっても、
まだ叫び続けます。
「おまえみたいな奴は初めてだ! これからどこへ行く! 言いなさい! 言いなさいって言ってんだろ! さあ言え! 言いやがれ!……」
 辣韮を食ひて腹中そそぎけり

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ウェブ

 ぶつぶつと一人下校の青田かな
カメラマンの畏友・橋本照嵩さんが
春風社十周年パーティーの写真を持ってきてくれました。
ご参加くださった百数十名誰ひとり漏れなく、
しかも個性あふれる瞬間をとらえてくれています。
山形の工藤先生からいただいた幻の銘酒「十四代」の
ビンを持ち上げ、鼻眼鏡でじっと睨む儒教専門の教授、
わが町の町長さんと話しているのは、
息子さんのお嫁さんが秋田出身とかで、
その関係から秋田を訪ねたという相模女子大学の教授、
『沈まざる未来を』の著者・上田先生とお話されているのは、
『ニュージーランド百科事典』の著者・青柳先生。
本で知っていて直接お目にかかるのは初めての先生は、
手帳にメモをとりながら本の著者のお話を聞いています。
まさにウェブ。
ウェブには、クモの巣という意味もありますが、
織物という意味もありますね。
一枚一枚の写真を丁寧に見ていくと、
見えないつながりの糸が見えてくるようで、
愉しくなりました。
大事な宝物です。
 ブラウスに透けて乳房のあはあはと

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富士のふもとの

 南国の花も富士見る花鳥園
朝、6時半出発。
ご近所のひかりなちゃん家のクルマに同乗させていただき、
富士のふもとの「富士花鳥園」「まかいの牧場」「天母(あんも)の湯」と
いい空気といい時間を堪能させていただきました。
あんなふうに旅行するなんて何十年ぶりでしょうか。
父も母も若く、やんちゃな弟がそばにいて、
家族一緒のことが何よりもうれしく、
わがままを言っては甘えたり、すねたりしながら
しずくのような時間が降り積もっていました。
後部座席でりなぴを膝に乗せながら、
わたしはすっかり童心に帰ってしまい、
ひかりなちゃんのパパの背中が父に、
ママの横顔が母に見え、底の方に眠っていた
忘れられない想い出が静かに溶け出し、姿を現し、
今と重なり少しだけ悲しいような気分を味わいました。
家族ぐるみのこういう付き合いをさせていただける
ことに感謝した一日でした。
天母(あんも)の湯で、露天のヒノキ風呂に入っていると、
パパさんも入ってきました。
いい湯ですねえ。いいですねえ。……
冬山に出稼ぎに出ていた父の仕事場を見に行った帰り、
祖父と入った温泉の匂いまで思い出されました。
 我も入る富士に抱かるる天母の湯

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朝の回数

 雷管の匂ひたなびく運動会
朝起きて、乾布摩擦した後200回、
1kgのダンベル二個を両手で持ち上下動させる回数です。
34×6、これは椎骨の数を意識しての気功の
蛹動(ようどう)、擺動(ばいどう)、捻動(にゅうどう)
の回数。
蠕動(じゅうどう)は変幻自在な動きなので回数は数えません。
それから朝風呂に入り、湯船の中で、爪揉み、
親指30回、人差し指50回、中指30回、
薬指をとばして小指50回、両手と両足。
保土ヶ谷駅で横須賀線の電車に乗り、
車中でも爪揉みをしますが、
右手から始めて左手の中指ぐらいで
電車が横浜に着いてしまうため、
残りの左手小指50回は京浜東北線の電車内で行い、
フィニッシュとなります。
 げじげじが割きイカみたく伸びてをり

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忍者ファイル

 やばちやばち夏の靴中ワニ眠る
先週のことです。
会社で使っているパソコンのファイルを整理していたら、
一番大事な「春風社」というファイルがスッと消えました。
目の前で、スッと。
消える瞬間をわたしはこの目で確かに見ました。
そのファイルには、売り掛けや買い掛けを始め、
会社の重要データがてんこ盛りに入っています。
削除したわけでもないのに、いくら探しても見付かりません。
困り果て、機械に明るい若者たちを呼びました。
いろいろ試してくれたのですが、
また、パソコン内を隈なく検索してくれても、出てきません。
その時です。
編集長ナイ2が、データ容量を調べてくれました。
どんどん数字がカウントされ、
もしも「春風社」ファイル全体が失われたとすると、
こんなに容量はないはず、とのことでした。
それなのに、検索に引っ掛かってこない。
まさに忍者ファイルです。
ホットラインでキャノンの技術の人を呼び出し、
待っている間、
機械音痴のわたしが気休めにポチポチポチポチやっていたら、
あーららっ、と。
消えた忍者ファイルが突如現れました。
どこをどうイジったのかも分かりません。不思議です。
技術の人が汗を掻き掻き駆けつけてくれたときは、
何事もなかったように正常の状態に復帰していました。
社の若手編集部員も煙に巻かれた具合です。
気か?
 よーいどん逆に走ってゴールする

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親はありがたい

 夏の日や歩き疲れてボブ・マーリー
週に何度か秋田へ電話をします。
忙しくて一週間ほど空いたりすると、
向うからかかってくることもあります。
とくべつなことはありません。
横浜は雨だけど、秋田はどうか、
田植えは終わったか、
中学校のバスケの試合はどうっだったか、
日曜日に春風社の本が朝日新聞に載るよとか、
十周年のパーティーはこうだったよ、とか。
悩みもないわけではありませんが、
そういうことは言っても仕方がないので、
喜んでくれそうな話題を話します。
そうすると、本当に喜んでくれるんですね。
その喜びがこっちにも伝わってくるものですから、
ますます喜ばそうと思います。
でも、その聞き方は、
ただ手放しで喜んでいるわけでもなさそうです。
こちらの報告の中に、
たとえば、ほんの少しの驕りが隠れている場合など、
ちゃんと嗅ぎ分け、
そのことを指摘してくれます。
オモテで褒めてウラで「今に見ていろ」というような
他人の不幸は蜜の味的な発想はありません。
ですから、今後の進むべき方向についても、
間違わないように、親に話し、
その聞き方に耳を傾けようと思っています。
 ビアガーデン西城もどきがイカを食う

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桜木町駅

 一等賞金紙メダルの運動会
桜木町駅周辺がどんどん変わっていきます。
始まりは、東急東横線の桜木町駅が
なくなったあたりからだと思いますが、
ガード下の落書きも今はありません。
一時、市が率先して、
落書きをしてくれる(?!)アーティストを募り
路上展覧会の様相を呈したこともありましたが、
方針が変わったのか、
今度は落書きすると、罰せられるのだそうです。
そんな貼り紙がしてあります。
駅の改札を出てみなとみらい方面へ向かうとすぐ左手に
ユニクロがありましたが、これもなくなり、
昨日Bubby’s YOKOHAMAがオープンしました。
「世界のセレブ御用達 パイ ニューヨーク発」だそうです。
ぼくはどう見てもセレブではありませんが、
掲示してあるメニューを見たら美味しそうだったので、
一度行ってみようと思っています。
 長靴で泥濘破る夏の子ら

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