二十二年ぶり

 花嫁の父の足取り水ぬるむ
 テレビ取材のクルーの方が番組で使いたいというので、写真に写っている生徒に連絡を取るのに、まずは以前勤めていた高校に電話をしてみた。
 事務の方に事情を話したところ、二人のうちの一人の連絡先は知っているという。教えてもらった番号にさっそく電話。ケータイに出た声は独特の高音で、すぐに彼女とわかった。せんせー、ひさしぶりー、……。
 写真のもう一人とは高校時代からずっと、今も付き合いがあるとのこと。番号を教えてもらい、電話した。もしもし。はい(こちらは低音)。○○さんですか。みうらです。せんせ? せんせーなの? 声は二十二年前とちっとも変っていない。
 目の前に写真を置いて話していると、二十二年前のそのときの二人に話しているような錯覚に囚われる。取材のことがなければ、この二人と話すこともなかっただろうと思ったら、不思議な気がした。
 夜、テレビをつけたら、日本経済大学の先生が「偶然ベタの若者」という題で話をしていた。偶然と思えることの豊かさ、それに意味を見出すことの喜びと意義、大切さ…。
 一日一日のちょっとした出来事が、大いなる世界の影にまもられ、響き合っているのだと思った。
 風船を見上ぐ人らの顔透けり

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