理事長

 冬晴れの布団叩きは上へ上へ
 わたしが住んでいるマンションは14世帯しかなく、賃貸の人もいて、またズルっこけて一切総会に出てこない人もいるから、理事長、副理事長、会計、監査の役がすぐに廻ってくる。
 今年は理事長だ。玄関ドアの交換(山の上のマンションなので、台風ともなると、それはそれは凄い雨風で、頑丈なドアは柔い団扇のような状態になる)が理事会に一任されたので、管理会社の担当と話し合い、あまり高価でなく、長持ちしそうなものに取り替えた。そうしたら、一日でわずかながら捻じれが生じた。おそらく、ドアのストッパーが上部にしかないので、誰かがドアを強く押したときに生じたのだろう。
 夜9時頃だったろうか。ピンポ〜ンと鳴った。○○号室の者ですが…。出てみると、見覚えのある男性が立っていた。玄関ドアが一日で捻じれたことへの不満と解決策の意見と案を縷々披露してくれた。なるほどと思ったので、二人で捩じれを直し、翌日、管理会社に電話して、すぐに対応してもらうことにした。
 それにしてもと思った。このごろトンと総会に姿を見せず、居るか居ないか居ないかイルカの○○号室の男性。自分の金が一部使われていると思ったのか、すぐに意見を言いに来た。
 管理会社に電話し、事の次第を告げたら、これこれこういう方法ではいかがでしょうか、それでダメだったら…などと甘いことを言うから、わたしの語気はいつの間にか荒くなり、それでダメだったらなんて言ってる場合か! 今までチラとも顔を見せない奴が、自分の金をちょびっと使われたと思ったら途端に積極的になりやがって、あんた悔しくないのか。それでダメだったらなんて甘いことを言っていると、ああいう奴に限って、今の管理会社ではダメだから管理会社を換えちまえ、なんて言い出すんだぞ。人間なんてそんなものさ。そう思わないか。いま考えられる限りベストな状態に仕上げろ。それでダメだったらなんて緩い気持ちでかかったら、絶対にダメなんだからな!
 興奮してしゃべったのだが、電話を切った後、無性に空しくなった。
 冬晴れを惜しみ何をしようかと

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