若さの秘訣

 女高生“まさかの限界!”冬晴れ間
 このごろ武家屋敷はウキウキ華やいでいる。先日、本人がトップページにも書いてあったように、ネットオークションでコンサートのチケットを入手したそうだ。パソコンに5時間も張り付いて。
 昼、食事に出ても、武家屋敷はニコニコしながらそのタレントのことを嬉しそうに話す。中学生時代はよしだたくろうのファンで、それ以来のことらしい。
 朝出社してくるときも、横浜市中央図書館を横に見ながら野毛坂を上りきり、大きな交差点に差し掛かる手前50メートルの場所に設置してある自販機のキリンファイヤーのポスターにもそのタレントが(あはは… バレバレ)使われていて、毎日そこで彼に会えるのが楽しみなのだそうだ。
 コンサートは9列目だというし、めったに会えないのだから、花束でも何でも渡してきなよ、と言っているのだが…。
 初雪や性無き景の中に落つ

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カウント

 冬晴れのすっごいい天気だそれ急げ!
 JRでは各都道府県をフィーチュアする宣伝・広告をしているが、先日、電車の中で、仙台の宣伝ポスター(A2サイズ5枚横に連ねた)を目にした。
 「伊達に行こう!」のキャッチコピーは如何なものかと苦笑したが、ジャズ喫茶のことが書いてあり、なんとなく、見た風景だなと思って近づくと、学生の頃よく通い、今年社員旅行で仙台に行った折に社員と訪ねたジャズ喫茶カウントの写真だった。
 日常的に通っていた、今では懐かしい場所が、こんな風に演出されると、非日常的な空間として宙に浮き出たみたいで不思議な感覚に襲われた。アルテックのでかいスピーカーのなんとカッコいいこと。
 湯たんぽや祖父のあばらをなぞりけり

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理事長

 冬晴れの布団叩きは上へ上へ
 わたしが住んでいるマンションは14世帯しかなく、賃貸の人もいて、またズルっこけて一切総会に出てこない人もいるから、理事長、副理事長、会計、監査の役がすぐに廻ってくる。
 今年は理事長だ。玄関ドアの交換(山の上のマンションなので、台風ともなると、それはそれは凄い雨風で、頑丈なドアは柔い団扇のような状態になる)が理事会に一任されたので、管理会社の担当と話し合い、あまり高価でなく、長持ちしそうなものに取り替えた。そうしたら、一日でわずかながら捻じれが生じた。おそらく、ドアのストッパーが上部にしかないので、誰かがドアを強く押したときに生じたのだろう。
 夜9時頃だったろうか。ピンポ〜ンと鳴った。○○号室の者ですが…。出てみると、見覚えのある男性が立っていた。玄関ドアが一日で捻じれたことへの不満と解決策の意見と案を縷々披露してくれた。なるほどと思ったので、二人で捩じれを直し、翌日、管理会社に電話して、すぐに対応してもらうことにした。
 それにしてもと思った。このごろトンと総会に姿を見せず、居るか居ないか居ないかイルカの○○号室の男性。自分の金が一部使われていると思ったのか、すぐに意見を言いに来た。
 管理会社に電話し、事の次第を告げたら、これこれこういう方法ではいかがでしょうか、それでダメだったら…などと甘いことを言うから、わたしの語気はいつの間にか荒くなり、それでダメだったらなんて言ってる場合か! 今までチラとも顔を見せない奴が、自分の金をちょびっと使われたと思ったら途端に積極的になりやがって、あんた悔しくないのか。それでダメだったらなんて甘いことを言っていると、ああいう奴に限って、今の管理会社ではダメだから管理会社を換えちまえ、なんて言い出すんだぞ。人間なんてそんなものさ。そう思わないか。いま考えられる限りベストな状態に仕上げろ。それでダメだったらなんて緩い気持ちでかかったら、絶対にダメなんだからな!
 興奮してしゃべったのだが、電話を切った後、無性に空しくなった。
 冬晴れを惜しみ何をしようかと

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編集ソフト

 一行の寒さ身に染む夜仕事
 このごろ編集ソフトのイン・デザインで仕事をする時間が多くなりました。先生は、社の岡田君。1日に岡田君を呼ぶ回数は、どんだけでしょう。数えたことはありませんが、多いときは十数回に及ぶこともありそうです。なるべく呼ぶ回数を減らしたいのですが、なかなか覚えられません。一つのことをするのに操作が三つを超えたら、もうだめです。年をとるのも悪くないというエッセイや本のタイトルを目にすることがありますが、わたしもそう思いたいですが、イン・デザインに向かいながら思うのは、つくづく年はとりたくないものだ、ということです。
 夜着かむり淡い恋など思ひ出づ

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佐藤さん

 名利去り海鳴り告げよ冬鴎
 夢を見ました。いままで一度も夢に登場したことのない人です。
 彼女の名前は佐藤さん。下の名前を忘れました。かつてのわたしの教え子です。髪の長い色白の背の高い大人しい娘でした。丈の長いスカートを穿いていて、当初、スケ番グループのメンバーかと訝ったのですが、そんなことはありませんでした。
 …駅の構内を佐藤さんと歩いています。なにやらわたしも気持ちがうきうきしています。どうやら一緒にどこかへ出かける風なのです。構内は人でごったがえし、ぶつからないように注意しているうちに佐藤さんは、居なくなってしまいました。どうしたんだろう。わたしをおいて先に行ってしまったのかな。なんだ…。
 券売機でキップを買い、改札を抜け、電車を待っていると、「せんせ!」。佐藤さんです。急に視界が開けたようです。「あれっ。佐藤! どうしたの?」「ほら!」佐藤さんは、いたずらっぽい笑顔を見せ、くるっと回転して見せました。いつの間にか制服を脱ぎ、私服に着替えていました。「これならだいじょうぶ! さ、行きましょ」「……」腕までつないでいます。
 それから、どんなふうに場面が切り替わったのかわかりませんが、佐藤さんとは別れ、わたしは歩きながらケータイ電話で、相手の店主に『わしといたずらキルディーン』がいかにすばらしい本であるかを力説していました。仕事ですから口角泡を飛ばして一所懸命ですが、佐藤さんが居なくなったことをどこかで寂しく思っていて、その寂しさが、全身に貼り付いて剥がれることはありません。これからどの世界を見ても、その色が基調となるような予感がしました。
 荒海や色無し冬の出雲崎

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