楊枝男

 慣れた道風が色めくすすきかな
 毎週木曜日は気功の日ですが、気功教室が始まる前に、横浜駅地下にある「魚敬」で回転寿司を食べるのが恒例になっています。ズワイガニ、ミル貝、鯵、シーフードサラダ、納豆巻きは、必ずたのみ、にぎりたてを食します。美味い!
 わたしはこれを勝手に祭りと称し、ささやかな楽しみにしているわけですが、週に一度でも、やはりいろいろなことがあり、いろいろな人と隣り合わせになるもので、先日は、恐怖の楊枝男に出遭いました。
 店員に勧められるまま、その男の横の椅子に座ったのですが、いやな予感がしました。
 その男、箸の替りに楊枝を持っているのです。嫌だなあと思ったのですが、仕方ありません。男の前には、空いた生ビールの瓶が二つありました。なるべく隣りを見ないようにしていたのですが、どうしても楊枝を持つ男の手が目の横に入ってしまいます。
 その男、寿司を食べるときは箸を持つのですが、それ以外は、右手にずっと楊枝を持ち、人の手前も気にせず、シーハーシーハーシーハーハーと、歯と歯の間に楊枝を突っ込んで、どうにも耳障りな音を立てます。顔を見たら、歳の頃四十前後。会社の人でも家族でも、どうして注意してあげないんでしょうか。
 何を食べても、隣りの音が気になり、週に一度の楽しい祭りは、不発に終わってしまいました。
 それほど嫌なら、席を移動しようかと自問したのですが、結局、移動はしませんでした。いくら嫌な音を立てても、さすがにそれは楊枝男に対して失礼と思ったからです。

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