煮卵や染み入る秋を待ちにけり
蜘蛛はダニを食べると、どこかで聞いたことがありまして、室内で蜘蛛を見かけても、そのままにしています。
以前は、つぶさぬように気を付けて捕まえ、外に逃がしてやっていたのですが、ダニを食べてくれるのなら、益虫ということになりますから、飼うほどではないにしても、そのままほっといてもいいかと思うようになりました。
今もあたしの右横のカーテンのところにおりまして、口の辺りをもぐもぐさせています。
ただ、蜘蛛が本当にダニを食べてくれるのか、定かではありません。どなたかお尻の方は、失礼、お知りの方は、お教えください。
十五夜の月を恃みて卵煮る
地上への階段恨めし雨の秋
昨日は気功の日。会社を出たらパラパラと小雨が落ちていた。そこで引き返せばよかったのだ。
歩道を歩く人を見ても、傘を差していない人のほうが多い。ケータイを取りだし、横浜の天気予報を見てみた。曇り。傘マークはない。大丈夫だな。
気功の日のわたしの楽しみは、始まる前にジョイナスの地下で回転寿司を食べること。わたしは、勝手にそれを祭りと称している。祭りが終って、地下街を抜け、地上に出ようとしたらどしゃ降りだった。く、く、く、く、くっそー!!!!! またか。
結局、駅のキオスクで傘を買った。六〇〇円(税込)。情けない。
八時四十五分に気功教室が終わり、外へ出たら、傘を差している人は誰もいない。晴れていたのだ。く、く、く、く、悔しいですっ!!!!!
古代よりチタン合金ゲジゲジ来
階段を上り上りて虫の声
急に思い出したように、そばやうどんを食べたくなる時があります。昨日がそれでした。
家に帰って夕飯を食べればいいのに、それはそれとして、うどんが食いてえーーーっ!!(これが日によっては、そばのこともあります)となり、矢も盾もたまらずに川村屋に入りました。桜木町駅前にある立ち食い蕎麦屋です。イカ天うどん390円也。うめかったー! 満足!
欲望を満足させ、電車の中では、九割がた出来ている懸案の原稿のことを考えていました。
夏休み終えて引きずる足となり
大雨が止み、いよいよ涼しくなるのかと思いきや、また急に熱くなって、朝気功をしていると玉の汗が吹き出してきます。これはこれで気持ちいいのですが、あと数日のことでしょう。耳を澄ますと、秋の虫たちの声が聞こえてきます。
少女来蓑虫風に吹かれたし
十五夜の池のほとりの気功かな
桜木町駅で電車を降り、改札を抜けて左へ出ると、みなとみらい方面ですが、すぐ左手にベックスコーヒーショップがあります。
広い窓ガラス越しにカウンター席がずらりと並び、お客さんが外を向いてコーヒーを飲んだり、サンドイッチを頬張ったりしています。歩きながら、つい顔がそっちに向き、目と目が合うことも。
昨日のことです。和服を着た初老のご婦人が、窓越しに、わたしに向かってニッと笑いかけてきました。後から考えれば、そんなはずはないのですが、パブロフの犬になったわたしは、条件反射して、ニッと、笑いに応じました。見ると、笑いと見えたのは笑いではなく、ご婦人が手鏡に向かって口を「え」のごとくにひらき、お化粧直しの緊張状態を顔につくっているのでした。
笑顔でかえしたわたしは、ばつが悪くなり、そそくさと通りすぎました。
休日の原稿止みて蝉しぐれ
京都の佛教大学で開催された日本教育学会に参加してきました。久しぶりの出張で、たまにはいいものです。
出張となると、これまで宿泊は東横インと決まっていましたが、今回は三井ガーデンホテル。
ロビーが広く、大欲情、失礼、大浴場が付いていて、部屋に飾った絵は、布団カバーと同じ膨張色の抽象画で、暖かい印象と広さを感じさせます。だいたいこういうところの絵というのは、青や緑のものが多いのですが、意図的にこういう絵にしてあると思わされました。全体として、ここは空間を大事にしているなと。
東横インがビジネスマンのために機能性、合理性を重視していたのに対し、対照的です。利用者がホテルに求めるものは何か、ていねいな市場調査をかさねた上でのことでしょう。洗面所には、アメニティーグッズを一つも使わなかった場合は、チェックアウトの際、フロントに持っていけば、エコ団体に寄付するとの但し書きが添えられていました。シャンプーなどは、中身が入れ替え制なのだとか。宿泊代も決して高くありません。
学会よりも、ホテルの設備と内容に、時の風を感じました。
蝉や蝉魂いずこ蟻ばかり