ムリ三中

 女子高生裾ひるがえす暑さかな
 昨日、網戸の張り替えをしました。
 一昨年、テレビでお笑いの森三中が、「自分でできる網戸張り替え! イェ〜イ!!」の番組をやっていて、それを見、へ〜、森三中ができるんなら、おいらだってできるべーと、さっそく近くのスーパーに行き、網を買ってきて、さあ、張り替えるぞー! と勢い込んだのですが、網を張り替えるにはゴムが要るのでした。
 汗をかきかき山を上った(わたしの家は山の上にあります)のに、また山を下り、スーパーへ行き、網を止めるためのゴムを見たら、な、なんと、太さがいろいろあって、調べてから買わないといけないのです。わたしはほとんど腐りかけていました。また家に戻り、ゴムの太さを計り、また山を下り、山を上りしてようやく張り替えたのが二年前。
 今回は初めてではないし、前回の経験と学習が身に付いているかと思って、気を抜いていた(わけでもないのですが)のか、山を下り山を上りして、さあ始めるぞと思ったら、またゴムがない。買うのをまた忘れてしまいました。気持ちが腐って、もうやめた! となりそうなのを堪え、また山を下りました。
 張り替えが終わったのが夕方六時半。網がたわまぬようにしながらゴムをグッグッと押さえ込む作業はなかなかに肉体労働で、ほとほと疲れました。森山中があんな涼しい顔でできるわけがない! ムリ三中と呼びたくなるゆえんです。
 クソ暑い中、何度も山を下り上りして、ほとんど死んだ魚のような目をしていたわたし(自分ではわかりませんが、おそらくそうだったでしょう)でしたが、最後にスーパーを出た時、向こうから来たミニスカート姿の女子高生三人組の一人のスカートが風に煽られ、はらりと翻り、中の緑のチェック柄が目に入り、死んでいた目は生き返りました。あの一件がなければ、網戸張り替えは頓挫し、来週まで持ち越しになっていたかもしれません。

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励み

 カブトムシよくぞ我が家に来てくれた
 仕事はありがたいものですが、楽しいことばかりではありません。苦しいことも辛いこともあります。それよりも多いのは、可もなく不可もなく、普通に過ぎていくことでしょうか。それをなかなか、ありがたいとは思えません。溜め息が出たりして…。
 日常生活というのは、そうそう刺激的なことばかりではありません。若い時は、いま思えば、恥ずかしくなるような刺激もありましたが、このごろは、せりのゴマ和えなんかが、ほどよい刺激です。
 十五、六から三十五くらいまでは、たしかに刺激的でした。が、さかのぼって、小学校の頃はどうだったかと思い返せば、楽しかったけど、そんなに刺激的でもなかったように思います。やはり、こころを励ますものが必要でした。
 カブトムシやクワガタムシは、その最たるものでした。
 大きな赤銅色の羽を持つこのクワガタが自分のものだと思えることが、かなりのつまらなさに堪えられるような気がしたものです。

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イボ

 重き足数へし月や夏来たる
「あのー、左足の薬指に変な赤いモノができたんですけど、数年前からあるにはあったんですが、このごろ、と言っても突然というわけでもないんですが、少し大きくなった気がしまして、それでちょっと診ていただいたほうがいいのかなぁ、なんて思いましてですね…。えーと、これなんですけどね…」
「ああ、これ。イボですね」
「は。いぼ!? あのー、ただのイボですか」
「ええ。ただかどうかはわかりませんが、イボですね。液体窒素を塗っておきましょう。ちょっとピリッとしますが、水ぶくれになって、それから黒くなって、1週間もすればポロッととれますよ」
「はあ。ポロッとですか…」
「ポロッと。特に塗り薬も飲み薬も出しません。まあ、またなんかあったら来てください。お大事に」
「あ、どうも。ありがとうございました」
「はい。次のかたー」
 というわけで、人騒がせなイボ君でした。ま、わたしだけが騒いだわけですが…。

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傑作ポテチ!

 幼虫を突ついて片端のカブトかな
 新潟が生んだあの伝説的名菓「ふんわり名人」の時もそうでしたが、先ごろ近くのコンビニに入ったところ、何やら遠くでわたしを呼ぶ声がして、うろうろしていましたら、あるところでピタリと足が止まりました。
 目の前にそれは静かに佇んでいました。北海道リッチバター。むむ…。
 わたしは普段そんなにポテトチップスを食べません。しかし、この北海道リッチバターのたたずまいというか、袋からただよってくる芳醇なオーラというか、手に取らずにはおられませんでした。
 サイズがあるのかもしれませんが、そのコンビニで買ったのは105円と、それほど高くありません。
 店を出て、家に辿り着くまでの時間ももどかしく、歩きながら袋を破り、いけないものを覗き見るようにして袋から1枚取り出し、口中へ。
 な、な、な、な、な、なんだ、こ、この味は!!!
 今までのポテトチップスのイメージを根底からくつがえすような芳醇な味。もうやめられません。やめられない止まらないというのはこのことです。
 卒業証書を入れるような筒に入った高めのポテトチップスもありますが、あんなのは、卒業証書同様、大したことがないのに、立派な筒でもって権威づけしているに過ぎません。ところが、北海道リッチバターは違います。105円ですよ。リーズナブル・プライスじゃないですか。いよっ! 庶民の味方! いいぞ、ヤマヨシ! と、声を掛けたくなります。
 ちなみに下の写真は、わたしがプレゼントした北海道リッチバターを顔全体、からだ全体で味わって食している最中の、りなちゃんのお姉さんのひかりちゃん。

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家が建つ

 ひたすらに藪かき分けてカブトかな
 近所の古びた家が取り壊され、新しい家が建つそうです。大きなオームを飼っている家で、切なくママ〜、ママ〜と鳴くことは、ここにも書いたことがあります。そのオームも、どうやら今は引っ越しをしたらしく、家が新築になったらまた性懲りもなく、ママ〜、ママ〜と鳴くのかもしれません。
 子どもの頃は、家が建つというのは見ていて楽しかったですねぇ。大工さんが数人、鋸を使ったり鉋を使ったり、しているうちに、だんだん柱が立ち壁ができて家らしくなっていきました。他人の家なのに、わくわくします。
 今回、近所に建つ家は、○○ホームとか△△ハイムとかいう今風の建築会社が建てるらしく、大工さんがトンテンカンと悠長に建てるものではなさそうです。それでも、朝、坂道を下りながら、今日はどんな具合かなと、つい見てしまいます。

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乾いた世を

 麦藁帽我れを残して歩きけり
 村田英雄の次は、三波春夫でございます。
 以前、作家の森村誠一がNHKの番組で、三波春夫を紹介していました。野生の証明や悪魔の飽食の作家が三波春夫かぁ、と、興味を惹かれ、途中からでしたが見ました。
 森村さんが言うには、三波春夫というひとは、母の胎に着床したときから、人を喜ばせ、たのしませることを運命付けられた根っからのエンターティナーだった、そんなようなことだったと思います。
 どれだけ多くの人が三波春夫の歌謡浪曲で元気付けられ、勇気付けられたか。森村さんもその一人だというのです。
 休日、『三波春夫スーパーベストアルバム』を聴きました。いいですね〜。
 俵星玄蕃の名調子も快く、また、大好きだった祖母の兄が酔うと必ず歌った「チャンチキおけさ」も、しみじみいい歌だなあと聴き惚れてしまいます。
 月が〜わびしい〜 路地裏〜の〜 ♪
 土曜ゴミ青天白日蝿ぶんぶ

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村田英雄

 カブトムシ籠を破りて飛び立てり
 わが社の武家屋敷は若い頃、ニヤニヤしていている村田英雄がきらいだったそうです。わかります。何が可笑しいのか、なんかあの人、いつも笑っているんですね。でも、若い頃の村田英雄は笑ってばかりはいません。きりりとした表情の村田もいます。
 わたくし、『村田英雄ゴールデンベスト』というCDを持っているのですが、プリアンプをラックスマンからボルダーに換え、あまりの音の違いに驚いている昨今、さて、村田君はどうかしらと思い立ち、CDプレーヤーに乗っけてみました。
 素晴らしい!! さすがボルダー。いや、村田英雄。NHKホールで歌っていたのが、ラスベガスのショーで歌っているかのように聞こえてきます。ちゃんちゃちゃんちゃん、ちゃららららんらん、らららららららんらん、と「無法松の一生」が始まるや、胸がふわ〜と、ひらかれていくようです。
 村田英雄はニッポンのキング・オブ・ソウルです。顔付きも、どことなくオーティス・レディングに似てないこともないような…。顔のでかいところとか。
 ギチギチと夜を賑はふ甲かな

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